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当たり前に行われている人身売買、中国には何人の楊慶侠がいるのか?

(略)

まず事件のおさらいから。

 現場は江蘇省徐州市豊県歓口鎮の農村。ここで楊慶侠という女性が首を鎖につながれ襤褸小屋で虐待されている様子の動画が1月末ごろネット上で流れ、誘拐されて農村に売られた花嫁ではないか、と世論が騒然となった。

気温0度前後の環境のなか、彼女は十分な衣服も与えられず、はだしで、言葉もきちんとしゃべれず脳や精神に障害をもった様子で、歯もなかった。

夫の董志民は動画の中で、1998年に自分が33歳のとき、親から与えられた嫁であり、8人の子供がいることなどを語っていた。中国の農村では、長年の一人っ子政策(中国の人口抑制政策。1970年代から2015年まで継続)により、結婚適齢期の男女比不均衡が深刻で、農村の男余り解消を目的に、女性の人身売買が普通に行われてきた。とくに90年代の徐州は、「農村の嫁」売買が活発に行われることで知られた土地柄であった。農村に売られてきた嫁は、抵抗すればひどい暴力を振るわれ、体や心に傷を負っていることが多く、鎖でつながれた楊慶侠はまさしく誘拐され農村に売られてきた嫁のイメージ通りの姿だった。

 彼女は一体何者か、という世論の追及に応える形で、豊県が二度にわたって公式発表したが、いずれも出鱈目であったことがほどなく暴かれた。豊県の上級政府の徐州市が調査した結果、彼女は雲南省福貢県亜谷村のリス族の女性、小花梅である、とした。だがそれでも中国世論が納得しなかった。事情を知っていると自称する人物が「彼女は夫・董志民だけでなく、夫の弟や夫の父親、3人の男たちの性処理の道具にされていた」とか「連れて来られたときは英語も話せる中学生だったが性暴力を受けた末、今のような有様になった」とか「楊慶侠と小花梅は異なる人物で、董志民は複数の嫁を買っていたのだ」とか、もっともらしい情報をネットに書き込んだこともあって、ネット世論は紛糾した。