アメリカ航空宇宙局(NASA)は2021年10月に打ち上げられた小惑星探査機「Lucy(ルーシー)」について、
2つ搭載されている太陽電池アレイのうち完全に開ききっていないことが判明している1つに関して、最新の状況を明らかにしました。
NASAによると、太陽電池アレイを最後まで展開させるためのコマンド送信が5月9日から6月9日までに5回試みられました。
依然として完全展開には至っていないものの、太陽電池アレイはより安定した状態になっていると推定されており、
ミッションの計画通りに飛行し続けられる可能性が高まっている模様です。


地球よりも太陽から遠く離れた木星の公転軌道付近まで飛行することから、ルーシーには直径7.3mという巨大な円形(正確には十角形)の太陽電池アレイが2基搭載されています。
この太陽電池アレイは扇のように広げて展開する仕組みになっているのですが、打ち上げ直後の2021年10月17日の時点で、片方の太陽電池アレイが完全に展開されなかったことが判明していました。

畳まれた状態で打ち上げられたルーシーの太陽電池アレイを展開するには、端に結び付けられている
長さ約290インチ(約7.4メートル)のストラップをモーターで巻き取る必要があるものの、展開が完了しなかった太陽電池アレイではストラップの巻き取りが途中で止まってしまった模様です。
NASAによると、残ったストラップの長さは20~40インチ(約51~102センチメートル)と推定されています。


2022年5月9日、ルーシーの運用チームは2つのモーターを使ってストラップを巻き取るコマンドを初めて送信しました。
ストラップを巻き取るためのモーターは、冗長性を確保するためにメインとバックアップの2つが搭載されています。通常は一度に1つのモーターしか作動しませんが、
2つのモーターを同時に作動させてより強いトルクを生み出すことで、残ったストラップを巻き取ることが期待されたのです。
過熱を避けるために、モーターは短い間隔を空けて繰り返し作動。
運用後に結果を分析したところ、残っていたストラップの一部が巻き上げられたことが確認されました。
同様のコマンドは5月12日にも送信されていて、固定機構が太陽電池アレイをロックするには至らなかったものの、
太陽電池アレイに張力をかけて安定させるのに十分な長さを期待通り巻き取ることができたといいます。

ストラップを巻き取るためのコマンドはその後も5月26日、6月2日、6月9日に送信されていますが、太陽電池アレイは依然としてロックされていない状態が続いています。
今後もコマンドを送る機会は何度かあるものの、必ずしもロックできるとは限らないようです。
ただし、ストラップの一部が巻き取られたことで張力がかかった太陽電池アレイはより安定した状態になっていると推定されています。
追加のモーター操作でさらに張力を加えることができれば、最終的にロックできなかったとしても十分かもしれないとNASAは予想しています。

NASA小惑星探査機「ルーシー」片方の太陽電池アレイを完全展開させる試みが続く
https://sorae.info/space/20220617-lucy-nasa.html
https://sorae.info/wp-content/uploads/2021/07/nasa-lucy-spacecraft-with-asteroid-768x504.jpg