18歳の長男もロシアとの戦争に動員される…フィンランド在住の日本人女性がいま最も恐れていること
靴家 さちこ

現在のフィンランドの現役兵数は約2万人で、有事には合計90万人の軍隊の動員が可能となっている。
冷戦が終結し、ヨーロッパの多くの国が停止した後も、フィンランドは徴兵制を続けてきた。
18歳以上の成人男子には6カ月の兵役、もしくは13カ月の社会奉仕の義務がある。その結果、
フィンランドでは、国の成人人口のほぼ3分の1が予備役という、欧州で最大級の軍隊を動員できる体制がある。
このような国では、いざとなれば自身も武器を取って馳せ参ずる選択肢も絵空事ではない。
実際に国防省の関連団体が行っている防衛訓練には現在、参加希望者が急増し、義勇軍に入隊した人もいる。
「ロシアが攻めて来たらフィンランドはどうする?」という問いに対して、巷では「もちろん戦う」という声も聞こえてきた。
徴兵制といえば、今年高校卒業予定の筆者の長男(18歳)も来年1月に入隊することが決まっている。
新兵はいきなり前線に駆り出されることはなく、国防軍で訓練を受けるだけなので一応安心はしているが、
わが子の軍服姿はまだ想像できない。

間違いなく戦争に近づいている

前述の通り、第二次世界大戦中には冬戦争と継続戦争と、ナチス・ドイツと組んで連合国側のソ連と戦った。ということは、
当時のフィンランドは枢軸国。しかしその史実についてフィンランド人に問えば、「ソ連と組むぐらいならそれしか選択肢が無かった」という、
大国に挟まれた国ならではの言い分を述べる。
その一方で1944年までソ連と戦ってきたフィンランドは、モスクワ休戦協定を結んだばかりに、
今度はナチス・ドイツとも戦った歴史がある。たとえ相手が昨日までの味方でも、状況が変われば状況に従うまでだ。
相手が攻めてくるならば、対抗するのは当然の対応だ。だが、警戒心を持ちつつも、親戚友人もいることだし、
良好な関係も続けたい――ロシアとはそんな関係でもある。
隣国ロシアに毅然とした態度を取ることで、フィンランドはより戦争に近づいているのは間違いない。
長男がロシアとの戦争に行くぐらいなら

赤ん坊だった長男が成人するまで暮らした第2の故郷フィンランドの最善を願わないわけではない。
周りのフィンランド人も、さすがにロシアがフィンランドにまで攻め込んでくることは無いだろう、
ロシア語話者がそれほど多くないフィンランドは手に入れる価値が無いはずだ、などという。

しかし、万が一フィンランドが戦争に巻き込まれ、長男がその前線に立たなければならないような事態となれば、
彼はもう一つの祖国日本に逃れてほしい、などと願っている。
自宅アパートの核シェルターの場所を確認しながら、願いが現実にならないことを祈っている。
https://president.jp/articles/-/57481?page=3