2016年、米国の国家安全保障に関する最高意思決定機関の一つで、大統領への諮問機関である国家安全保障
会議(NSC)が開かれた。機密指定された会合の議論の中身は、米国のオンライン誌スレートのフレッド・カプラン
氏の調査報道により明らかになった。

NSCが議論したのは、2014年のクリミア編入後、ウクライナ東部ドンバス地域への介入を続けるロシアが、隣接
するバルト3国(リトアニア、ラトビア、エストニア)の一つに侵攻した場合、米国はどう対応するかについてだった。

会合の参加者は、国防総省、情報機関を含む政府各省庁の次官級代表。シナリオは、通常戦力で勝るNATOがロ
シア軍の侵攻を食い止め、優位に戦いを進める中、ロシアは、限定された規模の核攻撃を行って、敵に戦闘停止を
強要する「エスカレーション抑止」概念に基づいて、NATO軍、ないしはドイツの軍事基地に対して「低出力」の戦術
核兵器を使用するというものだった。

米国の報復は、どのような兵器を使って、どこを攻撃すべきか―。

最初に挙がった候補は、ロシア西部の飛び地で、バルト海に面する軍港を持つカリーニングラードだったが、飛び地
とはいえ、ロシア領土に核ミサイルを落とすことは、全面的な核戦争に発展する恐れがあるとして却下。バルト3国
に侵攻したロシア軍に対する攻撃も検討されたが、同盟国の市民への被害を考慮し不適当とされた。

結局、最終的に選ばれたのはロシアに隣接する同盟国ベラルーシだった。この机上演習では、同国はバルト3国侵
攻には何の関係もなかったが、ロシアの同盟国と言うだけで、核攻撃の対象となることが決まった。

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