[山口二郎コラム] ウクライナ問題と日韓関係の修復

4/25(月) 8:39配信
ハンギョレ新聞

 ロシアによるウクライナ侵略は予想以上に続き、一般市民の死を伝えるニュースが毎日、新聞やテレビにあふれている。今年の春は、陰鬱な日々が続く。ロシア軍による残虐な殺戮は戦争犯罪であり、プーチン大統領の責任は重大である。しかし、彼を国際法廷に立たせることは不可能である。正義の追求と人命の尊重は、残念ながら、二律背反の状態である。いま優先すべきことは、なるべく早く停戦を実現し、人命の損失をこれ以上増やさないことだと、私は考える。

 ウクライナ問題は日本とアジアの安全保障をめぐる議論にも大きな影響を与えている。日本ではこの20年間、中国の軍事力増強と北朝鮮の核・ミサイル開発を受けて、安全保障と外交についてより積極的な姿勢を求める声が高まってきた。ロシアによるウクライナ侵略はそうした声を拡大している。

 日本にとっての問題提起となるのは、ドイツの政策転換である。開戦前、ドイツはウクライナの軍事支援には極めて消極的であった。しかし、ロシアによる侵略が始まると、急速に政策転換を進めた。防衛費を大幅に増加させるとともに、ウクライナへの軍事援助も拡大した。ドイツは日本と同じく第2次世界大戦における全体主義侵略国で、敗戦後は軍事的に低姿勢を保つことが国際的な貢献を意味していた。そのドイツが軍事的な積極姿勢に踏み出したのだから、日本もそれを見習うべきだという意見が日本国内で出てくることは、ある意味、当然である。

 しかし、日本とドイツの立場、環境は大きく異なる。第1に、ドイツは第2次世界大戦とそれに先立つ自国の罪業について、事実を認め、これを反省し、償うことでヨーロッパ社会に復帰することを許された。だからこそ、今回のウクライナ危機に際して、かつてナチスに征服されたポーランドがドイツに積極的な姿勢を取るよう促した。

 第2に、ドイツは自国の利益と国際正義について自分の頭で考える能力を持っている。2003年のイラク戦争開始前、ドイツはフランスと並んでイラク戦争に強く反対した。政治的、軍事的存在感を高めることの背後に知性や判断力が存在する。

 第3に、ドイツは難民受け入れについても、メルケル政権時代には積極的な姿勢を示し、国際社会における信頼を勝ち得ている。

 日本はこれらの点でドイツと対照的である。戦争と植民地支配の歴史について、最近では歴史修正主義の考えを持つ人々が政府や与党の中枢におり、教科書の統制を強めたり、ユネスコの世界歴史遺産の登録をめぐって自己中心的な主張を繰り広げたりしている。歴史認識をめぐる食い違いは、日韓関係の険悪化の大きな原因である。また、日本の外交はアメリカに追随することの繰り返しで、自国の利益を自分で考えた事例は北朝鮮との国交正常化交渉を始めたときくらいである。さらに、難民問題に対する消極的な姿勢は、国の内外から批判を集めている。経済的な停滞が続く中で、国際貢献に対する意欲はこの30年で大きく低下した。