自治体や民間団体などによるウクライナからの避難民の受け入れが進んでいる。出入国在留管理庁によると、16日現在で日本への避難民は649人。
ただ、難民受け入れに消極的な日本では近年、これほどの規模の外国人を一挙に受け入れた経験がない。加えて避難民について定めた法律もないため、
支援は手探り状態だ。識者は「避難民の権利が明確ではない」と指摘する。

 ロシアの侵攻で激しい戦闘が続くウクライナ東部ドンバス地方のドネツク州スラビャンスクから避難してきたシデンコ・ウラジミールさん(65)と
妻イリーナさん(66)が19日、福岡市南区で暮らす娘の黒川カリーナさん(39)と再会した。侵攻後は砲撃音で自宅が揺れ、爆撃を知らせる
アラート音で眠れぬ夜を過ごした。命からがら逃げだし、数年ぶりに会った娘や孫らに囲まれて安堵(あんど)の表情を見せた。

 当初、シデンコさん夫妻は黒川さんが避難するよう言っても「避難中にロシア軍から狙われるかもしれない。外に出ることさえ怖い。死ぬなら家で死にたい」
と拒んだという。しかし2人にはぜんそくの持病があり、吸入薬を手放せない。黒川さんは「ウクライナでは薬が手に入らず命が危ない。
避難できるうちに日本に逃げて」と説得を続け、ようやくこの日を迎えた。

 ただ、今後の暮らしには不安もある。ウクライナからの避難民は「短期滞在(90日)」の在留資格で入国し、希望すれば就労可能な在留資格
「特定活動(1年)」への切り替えが認められる。そうすれば住民登録して国民健康保険に入れるため、夫妻の相談に乗るNPO法人
「グローバルライフサポートセンター」(福岡市)の代表理事、山下ゆかりさん(59)は「持病のある2人が医療機関で受診できる環境をつくることが最優先だ」と話す。

支援態勢の不備、浮き彫りに

 しかし、避難民が「特定活動」の期間を更新できるかは不透明で、身分の安定は保証されていない。受け入れ国での長期滞在や広い権利が認められている難民に対し、
山下さんは「避難民は『いずれ帰ってください』ということ。個々の事情で『もう帰れない』となったら政府はどう対応するのか」と疑問を呈す。

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https://mainichi.jp/articles/20220421/k00/00m/040/224000c