ロシアのプーチン大統領は10日までに、ウクライナの全戦域を統括する司令官に、連邦軍の南部軍管区司令官を務めるアレクサンドル・ドゥボルニコフ大将(60)を任命した。米国と欧州の当局者がCNNに語った。
欧州の同当局者によると、ロシアは形勢が極めて厳しいことを認め、戦法の転換を迫られている可能性がある。
ドゥボルニコフ氏は、ロシアがシリア内戦に軍事介入した2015年9月から16年6月にかけて作戦の指揮を執った人物。ロシア軍は当時のアサド政権を支援し、北部アレッポの反体制派支配地域で人口密集地を空爆して多数の犠牲者を出した。
ロシア軍はウクライナでも主要都市の民間施設を攻撃し、南部の港湾都市マリウポリの街を破壊するなど、当時と同様の行為を繰り返している。ロシア軍の基本思想や戦術は昔からほとんど変わっていないと、同当局者は指摘する。
事情に詳しい専門家や米当局者らによると、ロシア軍将校らは現在、第2次世界大戦の対独戦勝記念日にあたる来月9日までに、何らかの戦果をプーチン大統領に示すことを目指しているとみられる。
元駐ロシア英国大使のロデリック・ライン氏は9日、英スカイニュースとのインタビューで、ロシアが「シリアでの蛮行の前歴」を持つ新たな司令官を任命したと指摘。その狙いは、少なくともウクライナ東部ドネツクで、プーチン氏が誇示できるような領土獲得を果たすことだと述べた。
ロシア軍のウクライナ侵攻をめぐっては、作戦全体を統括する司令官の不在で統制が取れていないとの見方を、CNNがかねて報じていた。米当局者らは総司令官の人選について、ロシア軍が一定の戦果を収めているウクライナ南部の作戦責任者が任命されるとの見通しを示していた。

https://www.cnn.co.jp/world/35186098.html