住民の行動を徹底的に規制する中国の「ゼロコロナ政策」をいつまで続けられるのか。経済が減速すれば、世界への悪影響は避けられない。

 中国で新型コロナウイルスの感染が急拡大し、1日あたりの感染者数は過去最多を更新し続けている。最大都市の上海市ではロックダウン(都市封鎖)が行われ、2500万人の市民の大半が外出を原則禁じられている。

 経済活動への影響は大きい。米電気自動車テスラの生産施設や、米アップル製品の工場は、職員が出勤できず、操業を停止した。国際空港では積み下ろしの人員を確保できず、航空各社の貨物便の欠航が相次いだ。

 サプライチェーン(供給網)の混乱や物流の目詰まりは中国だけの問題にとどまらない。企業活動と個人消費の停滞は、中国が掲げる経済成長目標の達成を困難にし、中国の市場や製品に依存する国にも打撃を与えるだろう。

 ゼロコロナ政策が欧米や日本と比べて感染者を大幅に抑え込む効果があったのは確かだ。だが、上海などの大都市でオミクロン株のような感染力の強いウイルスを完全に封じるのは困難になってきているのだろう。

 コロナの変異株が出るたびに、住民規制はより大規模になり、頻繁に行われるようになった。

 独自の政策は国民に多大な犠牲を強いている。陽性者を隔離する施設の劣悪な環境や、一人でも感染者が出れば地域全体が制限を受ける措置に対して、住民は疲弊と不満をあらわにしている。

 感染対策と経済社会活動の両立は各国共通の課題だ。多くの国が規制緩和に向かう中で、中国がゼロコロナ政策に固執するのは、習近平政権が感染抑え込みを「体制の優位の証し」と誇示し、習氏の功績と宣伝してきたためだ。

 習氏はゼロコロナ政策の「堅持」を指示し、感染拡大を招いた責任者を厳しく追及する姿勢を示した。経済や社会への影響を減らす対策も求めたが、現場の担当者は保身のために、過剰な規制に走る傾向がみられるという。

 硬直した政策は、コロナの初期の感染拡大時に武漢で起きたような情報 隠蔽いんぺい や医療現場の混乱を生み出すだけだろう。

 感染対策を体制強化の道具にするのは適切ではない。ウイルスの特性を見極めるなど、科学的で柔軟な対応が必要だ。日本は変異株への対策で、経験に基づく知見を持っている。中国側に対し、協力を提案してみてはどうか。

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中国の感染対策 「ゼロコロナ」は持続可能か
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20220405-OYT1T50200/
2022/04/06 05:00 読売新聞オンライン