Dr 林のこころと脳の相談室
【4461】統合失調症等の妄想はその人の論理的思考力によって形態が変わるのでしょうか
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あるいは、話が飛びますが、陰謀論を信じている方の中には到底論理的でないことを主張する人もいます。ワクチンを打てば5Gに接続するとか、地底には爬虫類人がいて世界を征服しようとしているだとか、本気で信じ込んでいる集団もいます。このような信じ込みと、精神病からくる妄想症状との違いはなんなのでしょうか?
このご質問は、「このような信じ込み」は「精神病からくる妄想症状」とは異なるという前提に立っています。しかしこのようにご質問にお答えするにあたって最初に指摘しなければならない重要な点は、「このような信じ込み」をしている人の中には、その「信じ込み」が「精神病からくる妄想症状」であるケースがかなりあるということです。この事実が見落とされている、あるいはなぜかこの事実の可能性を無意識に除外している人が非常に多いというのが現実です(この質問をされている質問者もご自分がその一人ではないか、振り返ってみていただければと思います)。それが精神病への理解や、精神病について考える姿勢を阻んでいると言えます。
この事実を認識したうえではじめて、「精神病からくる妄想症状」とは異なる「信じ込み」の存在について考える必要が出てきます。実はこれはインターネットの発達した現代における重要な問題で、妄想と区別がつかないくらいのレベルの迷信を信じる集団の存在は、ずっと昔からあったこととはいえ、現代ではかつてないほど増大しているとみることができます。そしてそれは、ときに真の精神病の妄想を強化する要因になっている場合があります。その悲惨な実例としてね2015年3月9日に兵庫県洲本市で発生した淡路島5人殺害事件があります。これは、強い被害妄想に基づき、被害妄想の対象者を殺害したという事件ですが、被告人は、インターネットを検索して自分と同じような被害を受けている人が全国に多数存在すると確信し、それによって自分の被害は事実であるという確信を強めたというケースでした。【4461】の質問者のテーマからは外れますが、
陰謀論を信じている方の中には到底論理的でないことを主張する人もいます。
という問題は、ずっと昔からある問題ではあるものの、現代、そして近未来には、人類の歴史上かつてなかったほど深刻な問題になっていると言えるでしょう。
(2022.3.5.)
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