無惨は病の始祖。黒死病、結核、麻疹、ハンセン病、梅毒といった上弦を産み、一見人類を苦しめることが目的のように見えるが、その実はただただ個として生き延びたいだけで特にそれ以上の目的はない。
生きながらえるための環境への適合や新たな機能の獲得のため多様な鬼を産み出しては変異を試みるが、人を媒介しなければ増殖できない故に人を利用する。個だけで進化できるなら無惨は鬼など作りたくもない。

一方で人はそれを黙って眺めてはいられない。人は病に抗うために死と交配による世代交代というシステムで僅かでも適応能力の高いものが次の世代に残るよう対抗。また単に種の保存だけでなく科学力をもって世代を紡ぎながら医学による対抗も試みる。

12年を一回りとし、様々な能力を持つ者たちが助け合い、多大な犠牲の上に、どうか次の世代で病を克服して欲しいと願い続けて今も尚その系譜は続いている。

この主題の上で展開される擬人化や戦闘、技の数々やキャラクターたちのエピソードなどは全て少年漫画としての味付けであり、そこに多くの論理性を求めてもさして得るものなどない。子供たちが真似をして面白いと思うなら、大人たちが読んで少しでも心に響くならそれで充分だ。