中国では大学生の借金苦が社会問題になっている。そのなかには非合法の「闇金」もある。
ジャーナリストの高口康太さんは「一部の金融業者の手口は非常に悪質。担保として全裸の写真や動画を提出させる業者もある。その結果、返済できずに女子大生が自殺するという事件も起きた」という――。

■中国のIT企業に襲い掛かる規制の嵐

「中国共産党がIT企業規制を強化している」

この一年というもの、繰り返し報じられてきたテーマだ。

昨年11月に中国EC(電子商取引)大手アリババグループの系列会社にして、決済アプリ「アリペイ」を運営するフィンテック(金融テクノロジー)企業アント・グループが、政府の指示によってIPO(新規株式公開)が延期された。一年が過ぎた今も、当局の指導の下、事業・組織改編が続いている。

また、アリババグループには独占禁止法違反で3000億円を超える行政制裁金が科された。デリバリー大手のメイトゥアンにも同様に制裁金支払いが命じられたほか、ゲーム・メッセージ大手のテンセントが主導したゲーム配信企業の「虎牙」と「闘魚」の合併が不許可となるなど、IT企業がらみの独占禁止法違反案件が続発している。

配車アプリのディディは6月29日に米ニューヨーク証券取引所に上場した直後、サイバーセキュリティ問題での審査を受け、新規ユーザー登録とアプリのダウンロード禁止処分を受けた。また、他の中国IT企業も米市場への上場を延期するよう当局に命じられているもようだ。

8月30日にはオンラインゲーム制限令が実施され、未成年(18歳未満)のユーザーは金土日と祝日の午後8時から9時だけプレイできるという厳しい制限が課された。

IT企業に次々と襲いかかる規制の嵐、果たして中国共産党は何を目的としているのだろうか。

■IT企業が覇権を握りつつある中国の金融業界
さまざまな説が飛び交っているが、注意すべきは、中国共産党は決して一枚岩ではないという点だ。時にヒュドラ(多くの頭を持つ龍)に例えられることもあるが、中国共産党と中国政府の内部にある、さまざまな部局がそれぞれの思惑で動き、政策に自分たちの意図を反映させようとしている。

一連のIT企業規制の嚆矢となったアント・グループの問題はわかりやすい。規制には大きく二つの流れがある。第一の文脈は伝統的金融機関の保護だ。かつては経済界の王様だった金融機関だが、現在ではIT企業との力関係は逆転している。

《建物に掲示されたアリペイ(支付宝)のロゴマーク=2020年10月29日、中国・上海 - 写真=EPA/時事通信フォト》
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全裸写真を親族にばら撒く…女子大生を自殺に追い込んだ「中華闇金」の恐ろしい手口
https://president.jp/articles/-/52250
2021/11/30 11:00 高口 康太