「人材」の表現に違和感 高校生の投稿きっかけに考える 人は「材」か「財」か 来月、国語辞典に「人財」初収録

◆「材」にモノ扱いの冷たさ

 取材の発端は、本紙「若者の声」欄への投稿だった。東京都江戸川区の高校2年生、米川純平さん(16)。進路を考える中で「人材」という言葉に触れることが増え、「働く人をモノ扱いするような冷たさを感じた」という。投書が掲載されると、賛同する意見が複数届いた。
 そもそも「人材」とは何か。三省堂国語辞典(第7版)を引くと、「はたらきのある、役にたつ人物」とある。同辞典編集委員の飯間浩明さんは「逸材」「適材」を例に挙げ、「『材』は才能の意味。悪い意味はない」と解説する。
 一方、「高校生の意見は当然の感覚」と話すのは、経営者向けに「経営人財塾」を開講する「人を大切にする経営学会」の坂本光司会長だ。「働く人をコストと位置付ける企業の考え方の表れ。働く人をかけがえのない財産と考える『人財』の意識がもっと広がるべきだ」と説く。

(中略)

◆大事なのは字面ではなく

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 若者の雇用問題に取り組むNPO法人「POSSE」の今野晴貴代表は、高校生の声に「かつては、会社が成長するために社内で育てるのが『人材』だったが、今はコスト削減のためにいつ切り捨てられるか分からず、人材になるのが怖い時代」と寄り添う。
 「人財」を使うトヨタ自動車でも、パワハラ自殺は起きている。今野さんは「使いつぶしの経済から脱却できない限り、どんな言葉を使おうが、若者が生きづらさを感じる状況は変わらないのでは」と指摘する。
 冒頭の高校生、米川さんにこれらの見方を伝えると、「役に立つか否かで人間をとらえることに違和感を感じていた。人は無条件に価値がある存在だと、自分は思う」と思いを語った。

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