■憎しみの“共同体”

 右派勢力は1990年代から、これまでの歴史認識に異を唱える“歴史戦”を展開してきた。それが2010年代には“メディア戦”にシフトする。

 ターニングポイントは13年のネット選挙の解禁だ。自民党はそれに合わせ、「ソーシャル・リスニング」を行うT2(Truth Team)を発足。ソーシャルメディアの投稿監視サービスを使って、自民党に不利なツイッターやブログの情報を監視、分析する司令塔だ。

 Dappiはこうした自民党のネット戦略に沿って動く先兵の一つではないか、と伊藤教授は言う。その特徴は徹底したマスメディア批判だ。「DAPPIのセイジコウサツ」というブログを見ればよくわかる。朝日新聞や毎日新聞、特定のテレビ番組をターゲットに「偏向報道」だと批判している。

「政府・自民党に批判的なマスメディアに対する反感を糧に、これまでとは異なる、自分たちに都合のいい疑似環境を作ろうとしているわけです。これは教科書を作り替えようという運動の延長です」(同)

 留意すべきは社会に浸透しやすい「憎しみ」の感情をベースにしていることだ。

「いわばマスメディアに対する憎しみの共同体です。自民党や政府を批判する『左派メディア』をターゲットにしているのは、ユーザーに最もウケるからでしょう。マスメディアが偉そうにしているのが気に食わない、という気持ちがリベラル批判につながっていると思います」(同)

https://news.yahoo.co.jp/articles/d9e0bdc1be6921eaecab64e56c0a3d0e1b35593d?page=2