■夫をノコギリで惨殺した妻「スッキリした」、50年にわたり耐え続けた壮絶なDV被害

 今年3月、夫(83)をノコギリでひき殺した女性(76)が逮捕された。女性は自首した警察で、夫への長年の恨みを語ったという。

 なぜ、ノコギリだったのか。事件の背景を知りたい。その思いで横浜地裁での裁判を傍聴した。

・夫のDVに耐え、2人の子を1人で育てあげた

 7歳年上の夫との生活は、「一日も心安らかに過ごしたことがない」ものだと、女性は日記に書き残している。給料は夫がパチンコと酒に費し、
「お金をください」と女性が頭を下げればわずかをよこすが、飲んでは物を投げ、殴る素振りで脅し、時には実際に殴られた。
飲まずとも、「クソババア」「バカか」の罵りを毎日浴びてきた。

 女性は簿記一級の資格をもち、経理を勉強し再就職を望んだが、現実は厳しく、スーパーのパートなどで2人の子を1人で育てあげた。
積年の願いだった離婚ができたのは、娘が独立し、夫が定年を迎えた年、53歳だった。

罵られない日常を生きるための離婚、53歳で得た自由だ。その人生が地獄に転じたのは、
わずか6年後だった。夫が栄養失調で倒れ、介護が必要になったのだ。

 アルコール依存症患者が入所できる介護施設はなかった。入院をすすめられたが、そんな余裕はなく、結局、夫を引き受け再婚した。
それは以前とは別の次元の暴力の始まりだった。

 夫は下の世話をしてもらいながらも暴言を吐いたという。あまりの臭さに吐きながらオムツを替えたこともあった。
やがて夫は自力で排泄できるまで回復はしたが、今度は、自室に引きこもった。

トイレには行くが、歯は磨かず、風呂に入らず、下着を替えず、雨戸の閉じた部屋で1日中テレビをつけゲラゲラと笑い、時に奇声を上げた。
そんな生活が17年間続いた。

 女性が日記をつけはじめたのはいつだったのか。証拠として出されたノートの表紙は花柄で、女性の名が書かれていた。
そこには女性の叫びが、短い言葉で綴られていた。

《T(夫)のこと、何もかも嫌い。特に声が嫌い》《結婚したこと自分を責める日々》《Tは100才まで生きる。それは困る。50年の憎い》
https://news.yahoo.co.jp/articles/e77205711f7ece179963c386b258b559c57c98ae