香港や中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区での中国政府による人権侵害行為の是正を日本政府に働きかける意見書などを可決した複数の地方議会の事務局に対し、在日中国大使館の職員を名乗る人物が「内政干渉だ」などと抗議していたことが15日、分かった。特定の議員に関する情報を尋ねたケースもあり、地方議会に対する中国政府の「圧力」との見方が広がっている。
「ウイグルは中国の領土の一部だ。地方議会であっても、核心的利益に関わる。内政干渉に当たる」
埼玉県議会関係者によると、今月5日、議会事務局に中国大使館参事官を名乗る人物から電話があり、こうした抗議を受けた。同議会はこの3日前、ウイグルの人権状況の調査や中国政府への抗議を日本政府に求める意見書を可決していた。電話の主は応対した議会事務局職員に対し「(県との)友好ムードに水を差すもので、遺憾を申し入れる」と伝え、意見書の作成に関わった鈴木正人県議の当選期数を尋ねたという。鈴木氏は産経新聞の取材に対し「公開情報なのに、わざわざ自分の名前を挙げて圧力をかける狙いだろう」と語った。
同様の事案は他の複数の地方議会でも確認されている。神戸市議会が昨年3月に台湾の世界保健機関(WHO)などへのオブザーバー参加を求める意見書を可決した際には、駐大阪中国総領事館の副総領事を名乗る人物が市長室に電話で「内政干渉で、『一つの中国』に反する」と抗議したという。
さらに複数の千葉市議によると、同市議会が元年12月、反政府デモが続く香港情勢を憂慮する決議案を採択する直前に、中国大使館の関係者を名乗る人物が議会事務局に対する電話で「(決議は)両国のためにならない」と牽制(けんせい)していた。採決時に賛成討論を行った桜井崇市議は「議会に対する恫喝(どうかつ)だ。決議案は民主的な手続きで採択されるもので、中国のやり方こそ内政干渉だ」と語った。
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