「ダメ。ゼッタイ。」はダメなのか? 薬物乱用防止の標語で意見対立、反対派・擁護派に聞く


 「ダメ。ゼッタイ。」。30年以上にわたり、薬物乱用の防止を呼び掛けるために使われてきた標語だ。
この標語が薬物依存症患者の立ち直りを妨げるとして、使用の是非について議論が起こっている。
反対派が「依存症患者への偏見を強める」と主張すれば、標語に賛同する側は「乱用を
始めさせないことが大切だ」と強調する。対立する双方に言い分を聞いてみた。

「『ダメ。ゼッタイ。』が相談しやすい環境を作るだろうか」。依存症患者の治療に取り組む国立精神・
神経医療研究センターの松本俊彦・薬物依存研究部長は、ダメなことだと強調するあまり、
相談や治療につながる敷居が高くなってしまっていると訴える。「依存症患者が自分に対する
嫌悪感やスティグマ(偏見)を内在化させてしまい、治療にアクセスするまで十数年かかる」と話す。

 以前、「覚せい剤やめますか、それとも人間やめますか」という標語があった。乱用者を
人間扱いしていない表現と批判が出たが、当事者らは「ダメ…」もその延長と捉えてしまうという。
薬物を使わせない予防活動は大事だとしつつ、「当事者を無視した行き過ぎた啓発は、逆に偏見を強化する」と批判する。

https://www.jiji.com/jc/v4?id=202107damezettai0001