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「残したメッセージ感謝」 犠牲のカメラマン矢内さん妻 亡父と同じ道歩む長女と現地で追悼 雲仙・普賢岳火砕流30年
6/3(木) 6:07

消防団員や報道関係者ら43人の死者・行方不明者を出した長崎県の雲仙・普賢岳の大火砕流発生から3日で30年を迎える。取材中に犠牲となった群馬県伊勢崎市出身の元NHKカメラマン、矢内万喜男さん=当時(31)=の妻、真由美さん(59)が2日までにメールで上毛新聞の取材に応じた。「(矢内さんが)残しているメッセージは大きい。そのことに改めて感謝の気持ちがある」とし、最愛の夫を失った悲しみを抱えた30年を振り返った。

 矢内さんは1991年6月3日、取材中に火砕流に巻き込まれ、その後収容先の病院で死亡した。前橋高、都立大を経てNHKに入り、湾岸戦争を取材するなど報道の第一線で活躍していた。

 真由美さんは被災当時について「深く傷つき、混乱し、細かいことは覚えていないくらい」と振り返る。現在は「30年も過ぎたんだなというのが素直な気持ち。節目というのは周りが使う言葉で、私にとっては少し違和感を覚える。日常の中にすっかり溶け込んでいるものだから」と説明した。

 当時1歳だった長女の美春さんは現在、カメラマンとして活躍している。当時の父親と同じ31歳になった今年、雲仙岳災害記念館(長崎県)での企画展「再生する風景に向かって」(27日まで)に参加し、「家族」をテーマに撮りためた写真を展示している。

 真由美さんは美春さんについて「正義感、率直さ、自分に正直なところは(矢内さんに)似ている」と感じている。「矢内が亡くなった31歳という同じ年齢を迎え、たいへん不思議な気持ちを抱えながらゆっくりと前に進んでいる」とした。2人は3日、現地で追悼するという。

 災害対策については、危険性などを先入観で決め付けず、科学的データを多角的に分析する必要性などを指摘。その上で、「学校教育の中に『災害を前提とする日本』を入れてもいいのではないか。人と人とのつながりによる防ぎ方、守り方がとりでになるのではないか」としている。