政府は英製薬大手アストラゼネカが開発したワクチンの調達分の一部を台湾に供給できるよう同社と交渉を始めた。ワクチン調達が進んでいない台湾への緊急支援をめざす。政府はアストラゼネカと海外に譲渡できない契約を結んでおり、同社の了解を得る必要がある。
 日本政府は米ファイザーと米モデルナのワクチンで約2.4億回分(約1.2億人分)を確保している。アストラゼネカとは1.2億回分の供給契約を結んだ。21日にアストラゼネカのワクチンを薬事承認したが、日本国内の公的接種の対象から当面外す方針だ。
 加藤勝信官房長官は28日の記者会見で「国内の接種対象者の数量を上回る分のワクチンは、他の国・地域への提供について早急に検討する」と述べた。茂木敏充外相は対象国・地域に関し「日本との関係なども考えながら検討していきたい」と説明した。
 日本政府によるとアストラゼネカとの契約はワクチンの他国への譲渡を認めていない。国同士の横流しを防ぐ目的だという。厚生労働省が同社と台湾への供給実現を念頭に契約内容の修正交渉を進める。
 日本政府は米欧などと連携し、ワクチンを途上国に無償で分配する枠組み「COVAX(コバックス)ファシリティー」を重視してきた。各国が拠出額を出し合い、ワクチンを調達する。
 台湾へのワクチン供与を巡っては、自民党の外交部会などが日本政府に対応を促す。28日の会合で示した台湾政策全般をめぐる提言案にも盛り込んだ。
 提言案は外交部会の台湾政策検討プロジェクトチーム(PT)が作成した。台湾が環太平洋経済連携協定(TPP)に参加するよう日本政府に働きかけを求めた。日台間の海上保安連携の強化も取り上げた。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA284500Y1A520C2000000/