――日本はG7で唯一、この問題で中国に制裁を科していません。

 「2015年以降、当局のテロ対策によって新疆への対応が厳しくなった。
必死に対策した結果、ジェノサイド条約に反するとみられかねない行動が垣間見られるようになった。
ただ、事実関係は客観的に確認できておらず、推定有罪にすぎない。認定には留保をつけないといけない。
一部の国は日本に立場をはっきりさせろと言うが、例えば国際司法裁判所の裁定があればいざ知らず、そうではないのだから慎重に対応すべきだ」

――日本政府はどうするべきでしょうか。

 「日本国憲法は普遍的価値である人権を非常に大切にしている。だから、日本外交が人権問題に無関心でよいはずはない。
たとえ外交上の効果はマイナスでも、自分たちの価値観を表明することは、憲法が本来命ずるところだ。
ただし、日本はこれまで世界の人権問題への発信は弱かった。今回、中国に対して発信するのであれば、これからも常に発信し続けるべきだ」

――日本でも中国に対して制裁など具体的な行動を求める声が高まっています。

 「具体的行動も慎重になるべきだ。行動した結果、何を得られるのだろうか。
とりわけアジア諸国は、戦前の日本の行動は、人権を無視しており、俺たちに説教する資格があるのかと反発する。
同じ発言をしても欧米より日本への反発の方が大きい」

――人権は普遍的な価値ですが、欧米と中国の見方の差は大きいです。

 「日本は150年かけて西洋文明をかなりの程度理解した。しかし、中国の西洋文明に対する理解は改革開放から始まり、まだ40年。
彼らがどこまで正確に文明としての人権を理解しているのか疑問だ。
『人権の中でも生存権と発展権が最も重要であり、まず社会を安定させて、経済を発展させ、皆を食べさせる。
そのためには、その他の、例えば政治的自由を制限しても仕方がない』というのが中国の論理だ。
一方で、人権は公の利益と衝突すれば制限されるのだから、欧米の人権も絶対ではない。その差は程度の問題と言えなくもない」