経済安保 米中のはざまで(インタビュー)

 中国による新疆ウイグル自治区での人権侵害があるとして、欧米が中国への制裁を強めている。
日本は主要7カ国(G7)で唯一、対中制裁に踏み切っておらず、人権をめぐる制裁には及び腰だ。
日本は今後どう対応していけばいいのか。宮本雄二・元中国大使に聞いた。

――欧米は新疆でウイグル族ら少数民族への人権弾圧があるとして「ジェノサイド(集団殺害)」と認定し、中国側を制裁しました。
ただ、宮本さんは人権外交のもたらす効果についてかねて疑問を抱いてきました。

 「人権外交で制裁して、状況が改まった例を知らない。効果はほぼないだろう。むしろ、対象国との関係を悪化させる負の面がある。
では、何のために人権外交が行われるのか。それは制裁を発動する国の国内世論対策だ。
欧米は国民が他国の人権状況の改善を求める。それが人権外交の本質だ。ただ、日本では国内世論の要求は弱い。
人権外交をしないと次の選挙で負けることもない」

――中国政府は人権問題に関する欧米の批判に取り合う姿勢がないように見えます。

 「中国は欧米が人権問題を戦術として使っていると考えている。
『(欧米は)人権をいい加減に扱っていると言って、国際社会での正当性を揺さぶるのに都合が良ければ使うが、
お金もうけをしたいと思えば使わない』というように。だから、『内政干渉』だと反発する」

 「人権外交は必ずダブル、トリプルスタンダードになる。すなわち、やりたくない相手に対しては手加減してしまう。
私がミャンマー大使をしていた頃、米国はミャンマーを制裁したが、当時中国は制裁されなかった。
外交は信頼性、一貫性がなければならない。国によって対応が違えば、対象国もまじめに対応しない」





人権問題への制裁「効果ほぼなし」 中国とは話し合いを
https://www.asahi.com/articles/ASP4V6SFRP4SULFA018.html