中韓との協力は「実利」 目を背けずアンテナを―三国協力事務局長インタビュー

 日中韓の協力を推進する国際機構「日中韓三国協力事務局」(事務局ソウル)の道上尚史事務局長が時事通信のインタビューに応じ、
歴史問題などで対立を抱える中でも、中韓との実務協力を進めることが日本の「実利」になると強調し、3国の協力枠組みを活用するよう訴えた。一問一答は次の通り。

(略)

 ―日本では中韓との協力は日本側の一方的な「持ち出し」ではないかという懸念がある。

 環境や高齢化対策、防災などは日本が先んじており、中韓は熱心に学ぶ姿勢だ。日本のアピールになっている。同時に中韓は極めて速いスピードで行政能力を向上させている。
例えば韓国では全国民の医療データが一元的に管理されているが、日本にはない。デジタル行政でも特許法制でも韓国が進んでいる部分がある。
日本は日進月歩で成長する中韓から目を背けては損をするだけ。アンテナを張り、参考にすべきところはするのが実利だ。

 ―民間で中韓が進んでいる分野は。

 映画の場合、30〜40年前は日本が中韓の「先生」だったが、今や中韓は米国をはじめ世界のマーケットを視野に入れ、人脈も実績もある。日本は外に目を向けておらず、日本の専門家も「中韓の制作者と交流し、刺激を受けるべきだ」と訴えている。

 ―日中韓には歴史や安全保障で対立もある。

 外交・安保分野で対立があるのは事実だが、それとは別に各国とも環境や高齢化、防災など切実な問題も抱える。官民多くの分野で協力に向けたニーズがあり、対話の枠組みは有用だ。

 ―日韓関係が悪化している。

 かつては韓国が日本に不満を持つ構図だったが、この10年来それが逆転している。日本側は韓国に失望し、憤慨しているが、韓国人の多くはそれを理解していない。日本の韓国離れも強く感じる。
日本は外交・安保で言うべきことはしっかり言うべきだ。同時に中韓をよくウオッチし、総合的に把握した方がよい。「嫌いだから」と目を背けるのは得策でない。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2021042500256&;g=int