太陽光発電のポリシリコン、世界生産の半分は新疆ウイグル地区
4/13(火) 14:31
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ニュースソクラ

【藤和彦の眼】米労組から輸入停止求める声、米国の中国離れ加速か

 今年1月20日に誕生したバイデン米政権は、内外ともに活動を本格化し始めている。

 中国については当初「米国にとって今世紀最大の地政学上の課題」としつつも、「可能なときには協力的になる」としていた。

 協力可能な分野としては、新型コロナウイルスのパンデミック対応や気候変動対策が挙げられていたバイデン政権だったが、日が経つにつれて、中国との協力が非常に難しいことを実感しているのではないだろうか。

 まず最初に新型コロナウイルス対応だが、3月30日に公表された世界保健機関(WHO)の武漢調査団の報告内容を巡り、米中の間の溝の深さが改めて浮き彫りになった。

 バイデン政権は前政権と異なり「中国ウイルス」という呼称こそ控えているが、「WHOの武漢調査団が中国のオリジナルデータに十分アクセスできなかった」と強い不満を表明した。これに中国は猛反発し、「米国の研究所の調査も行うべきだ」と言い出す始末である。これでは米中両大国が協力してパンデミック対応を強力に推進するなど「夢物語」である。

 気候変動問題については、米国のケリー大統領特使が4月3日「中国と協力できることに米国政府は期待を寄せている。バイデン政権は中国との間で気候変動対策のために他の問題を人質にとることはない」と秋波を送っている。

 バイデン政権は22日に米国主催の気候変動サミット開催を予定しており、中国に対しても参加を促している。

 サミットの場で米国は世界で最も多くの二酸化炭素を排出している中国を口説き落とそうとしているのかもしれないが、実際のところ、中国が気候変動に関する米国のリーダーシップなど期待していないのであろう。

 それどころか、米国内で環境問題でも中国との摩擦が生じつつある。米国内での環境問題に関する意識の高まりを受けて意気軒昂な太陽光発電業界だが、太陽光パネルに使われる部材の主要生産地が新疆ウイグル自治区であることが政治問題になりつつある。

 新疆ウイグル自治区では、太陽光エネルギーを電気に変えるために不可欠なポリシリコンの世界の供給量の半分が生産されている。米国最大の労働組合である米労働総同盟産別会議はバイデン政権に対し、新疆ウイグル自治区で生産されるポリシリコンを含む太陽光関連製品の輸入を禁止するよう求めている(3月17日付ブルームバーグ)。

 新疆ウイグル自治区で生産されるポリシリコンが安価な石炭火力発電に依存していることもバイデン政権の環境政策にとって望ましくない。

 米共和党のルビオ、民主党のマークリー両上院議員は3月23日、新疆ウイグル自治区での強制労働で作られた太陽光関連製品に米国がどの程度依存しているかを示すよう、米国太陽光発電協会(SEIA)に要請した。

 これに対しSEIAの幹部は「両議員の懸念を共有している」とした上で「米国の太陽光発電企業に今年6月までに新疆ウイグル自治区から完全に撤退するよう求めている」との決意を述べた(3月24日付ロイター)。バイデン政権は気候変動問題で中国と協力したくても人権問題が障害になっている。