「幸せだった人、順風満帆の人生を送ってきた人たちが、コロナで辛い目にあっているという姿を見るのが、正直快感というか。これまで頑張ってきた人達が苦しみ、
頑張ってもどうにもならず、頑張ることを辞めた私は、以前と変わらない生活を続けられている。みんなはマイナスだが、私は現状維持。その差こそ、初めて感じた『喜び』です」

 埼玉県在住の小川栄吾さん(仮名・47歳)は、就職氷河期ど真ん中に大学を卒業。第一志望だった保険会社、商社の採用からはことごとく漏れ、
現場作業員などのアルバイトを経て、知人の紹介で全く希望していなかった清掃会社に入社したという経歴を持つ。

「都内の大きなビルに常駐し、ひたすら館内の清掃を行います。自分と同じくらいの年齢のサラリーマンが、ビシッとスーツ姿で、
かわいい女性社員を引き連れて歩いていたり、商業施設で買い物をする若者を見ていると……俺は何なんだって、絶望しかありませんでしたよ」(小川さん)

 コロナ騒動直前の一昨年頃には、多忙ではあるが先の見えない仕事と、自身の将来を悲観し続けたことで精神的にダウンした。
別に住む場所や食べ物に困っているわけではなかったが、周囲と比較した時、結婚もしておらず子供もいない自分がひどく惨めに思えたのである。

「同級生は、すでに課長になっているような年代。私も会社では部下をまとめる立場でしたが、将来性が圧倒的にない。
世の中が好景気だろうが不景気だろうが仕事の増減もなく、私のように家庭もなく、中途半端な年齢の社員はリストラの対象だとも言われていて、鬱状態に陥りました」(小川さん)

 ところが、世の中がコロナ禍に見舞われると、小川さんの心境は一転。心のモヤモヤが晴れたという。どういうことか。

「飲食店を何件も経営していた友人が会社を潰したり、一流大学を出て一流会社に勤めていた同級生がSNSにコロナを悲観する書き込みをしていたりしました。
それまで、SNSも友人の自慢話ばかりで見てもいいことはありませんでしたが、彼らが苦しいと訴える書き込みを見ると安心できました。
ニュースもコロナコロナ、失業者が増えた自殺が増えたという報道を見て、自分以外の人たちが一斉に不幸になっている様子が、すごく心地よかった」(小川さん)
https://news.yahoo.co.jp/articles/739d513a1e4565cb386f8fa530234733942dc0dc