【ワシントン=共同】1968年に北朝鮮が米海軍の情報収集船を拿捕したプエブロ号事件を巡り、米首都ワシントンの連邦地裁は25日までに、激しい拷問により多くの乗組員が身体的被害を受けたなどとして、北朝鮮に23億ドル(約2440億円)の支払いを命じる判決を言い渡した。
米政府系メディア、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)などが伝えた。
プエブロ号は68年1月、北朝鮮東海岸の元山沖で拿捕され、乗組員82人が拘束された。
同年12月に板門店を通じて釈放、拿捕時に死亡した1人の遺体も引き渡されたが、船は返還されないまま北朝鮮で係留されている。
連邦地裁の判決は今月16日付。
北朝鮮の「残虐行為」で大半の乗組員が心的外傷後ストレス障害(PTSD)や記憶障害、フラッシュバックなどに苦しめられ、家庭生活や仕事がうまくいかず、中には自殺を考えた人もいると指摘。元乗組員や遺族ら原告約170人に対する損害賠償や懲罰的賠償の必要性を認めた。
米政府はブッシュ(子)政権下の2008年、北朝鮮の「テロ支援国家」指定を解除したが、トランプ前大統領が17年11月に再指定した。これを受けて、元乗組員や家族らが18年2月に提訴に踏み切った。
VOAは「連邦地裁が認めた賠償金の総額は、国家が支援したテロ事件では最高額」と伝えたが、北朝鮮が支払いに応じる可能性は極めて低いとみられている。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN26DZ40W1A220C2000000/