【朝日新聞】卒業式、私は歌わなかった 君が代「強制」拒んだ思いは

君が代より大音量のパワーホールが似合いそうな木村ひびきさん(21)
http://erakokyu.net/wp-content/uploads/2021/02/AS20170225000669_comm.jpg

とても楽しかった。良い友だちばかりで、先生たちのことも大好きだった。
だけど「あの日」を思い出すと、つらく、切なくなる――。
まもなく、卒業式の季節。大学3年生の女性が3年前を振り返り、語った。

 2014年3月6日。木村ひびきさん(21)=大阪市=は大阪府立高校の卒業式を迎えた。
式が始まり、「国歌斉唱」の声が体育館に響いた。

 同級生が起立したままのなか、木村さんはいすに座った。足が震えて、胃がきりきり痛んだが、
斉唱の輪には入らなかった。「まわりの人と違うことをしている」。怖かった。

 「起立する時だよ」と教えてくれようとしたのか、誰かが後ろから肩をポンポンとたたいた。
体がこわばった。その直後、別の誰かが「ひびきは『アレ』だから」と言った。

 木村さんはその日の朝、校門前で同級生らにビラを配っていた。
「私は、今、声をあげます。不起立で意見を表明したい」。冷たい視線を送られると覚悟していたが、友だちの多くが手に取ってくれた。

 「ひびきは『アレ』だから」。木村さんは、その言葉の意味を「ひびきは『意見』を表明中だから」と受け止めた。
ビラを手にした友だちが、自分のことを理解してくれている――。気持ちが少し楽になった。

https://www.asahi.com/articles/photo/AS20170225000671.html