江戸時代から続く川魚料理の名店で、夏目漱石ら文豪に愛され、映画「男はつらいよ」では寅さんの妹さくらの披露宴で舞台になった東京・葛飾柴又の料亭「川甚」が、コロナ禍による経営難を理由に1月末で閉店する。
創業231年。都内で相次ぐ飲食店の「コロナ閉店」の中で最も歴史ある店。日本食の文化継承に影響が出ると心配する声も上がる。

都会の喧噪から離れた、東京と千葉の都県境を流れる江戸川のほとり。
柴又帝釈天に近い立地から、観光客だけでなく、婚礼や法要などで地元の人にも親しまれてきたが、コロナの感染拡大で売り上げが減った。

8代目社長の天宮一輝さん(69)は「いくらシミュレーションしても明るい兆しが見えなかった」と明かす。支援制度を目いっぱい使い、光熱費なども切り詰めてきたが限界だった。閉店は昨年末に決断した。

1969年公開の「男はつらいよ」第1作で、さくらと博の結婚披露宴の場として描かれ、名前が知れ渡った。
さくら役を演じた俳優の倍賞千恵子さん(79)は本紙の取材に「玄関のたたずまいが印象的だった。とても残念で寂しい」と名残惜しむ。

江戸・寛政年間の1790年に創業。明治になり、幸田露伴の小説「付焼刃」を皮切りに、文学作品で江戸川を描写する際は土手ではなく、川甚の座敷から見た風景を描くのが定着した。
夏目漱石の「彼岸過迄」や松本清張の「風の視線」にも実名で登場する。
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