止まらぬ日本のCO2排出、原因は「粗悪な住宅」にあると言えるワケ
https://news.yahoo.co.jp/articles/113fcccf4b25f4691dddea69a06b2d8aed051956

菅政権の誕生をきっかけに、日本もようやく本格的な脱炭素政策に舵を切り始めた。だが、これまで脱炭素に消極的な政策を続けてきたツケは大きく、日本企業は環境技術において大きく出遅れている。前回は石炭火力に依存したエネルギー政策について取り上げたが、課題はそれだけではない。脱炭素社会を構築する上で、日本の家屋が大きなボトルネックとなる可能性があり、住宅事情の改善が急務となりつつある。



〈中略〉

一方で、家庭も自動車と同じくらいCO2を排出しており、家庭における脱炭素化も同時並行で進める必要がある。だが日本の場合、ここに大きなボトルネックが存在する。

 日本における家庭部門の1人あたりCO2排出量は約1.5トンとなっており、この数字についても欧州各国と比較するとかなり多い(UNFCCC、IMF、IEAなどから筆者算出)。日本の排出量が多いのは、石炭由来の電気を多く使っていることが大きく影響していると思われるが、それだけが理由ではない。

 英国やフランスは日本と比較するとはるかに寒く、多くの地域が北海道並みの気候となっており、暖房にかなりのエネルギーを必要とする。エネルギー消費という観点で考えると、冷房よりも暖房の方が圧倒的に不利であり、本来なら日本の方が排出量を低く抑えられるはずだ。欧州ほどの暖房需要がないにもかかわらず、日本のCO2排出量が多い理由の1つは家の断熱性である。


●日本の家屋の断熱性はすでに中国以下

 海外の住宅事情を知らない人は驚くかもしれないが、諸外国と比較して、日本の住宅の断熱性能は驚異的に低い。つまりいくら暖房を入れても、その熱の多くを外に放出しているので、多くのエネルギーがムダに捨てられているのだ。

 日本では冬になると、居間とトイレや風呂場に大きな気温差が生じるのは当たり前という感覚だが、主要国の住宅ではこうしたことはまずない。日本では窓枠にごく普通にアルミサッシが使われているが、アルミというのは最も熱伝導率が高い部材の1つであり、言い換えれば簡単に室内の熱を外部に逃がしてしまう。窓も単板ガラスを使ったものが多く、やはり多くの熱を放出する。

 アルミや単板ガラスの採用はコストを優先した結果だが、こうした低い断熱性能しかない家が標準的になっているのは先進国では日本だけであり、最新基準では、すでに韓国や中国よりも低いというのが現実だ。政府はこうした事態を打開するため、2020年に省エネ基準を義務化する方針で法整備を進めてきたが、結局は見送られた。理由は施工技術が低い事業者が多く、諸外国のように省エネ住宅を大量に建設することが難しいというものだった。