日本におけるネトウヨと陰謀論の関係

 先日のアメリカ大統領選では、接戦州の選挙結果もさることながら、トランプ大統領自身が選挙不正をTwitter上で訴える「断末魔の叫び」が日本のメディアでも連日大きく報じられた。実際には、選挙不正を示す確たる証拠はなく、単なる「陰謀論」にすぎないとの見方が大勢であるとはいえ、ロイター通信の報道では、今なお、共和党支持者の52%が「真の勝者はトランプだ」と答えるなど、その「陰謀論」を信じるトランプ支持者も数多くいるようである。

 もっとも、陰謀論やデマの類は今に始まったわけではなく、古今東西にわたって存在する。もちろん、日本もその例外ではない。日本においても、たとえば「ネトウヨ」(ネット右翼)が発する陰謀論がネット上にはごまんとあふれている。辻大介の研究によれば、ネトウヨはネットユーザー全体のおよそ1〜2%に過ぎないと推定されるものの(辻、2017)、その存在感は年々増しているように思われる。

 実際に、2010年代以降、「右傾化」や「ネット右翼」に関する数多の書籍や論文が出版されているし(e.g. 小熊・樋口編 、2020;田辺編、2019;樋口ほか、2019ほか)、2014年都知事選において、自衛隊元航空幕僚長の田母神俊雄氏が20代の得票率で第2位となったことも大きな話題となった(遠藤・ジョウ、2019)。

 こうしたネトウヨの社会的・政治的属性に関しては、辻(2017)などの詳細な分析がある。しかし、彼/彼女らが発する陰謀論的な言説がとどまることなく広がり続けているメカニズムの方はさほど解明が進んでいない。そこで以下では、この点に関する筆者の研究成果の紹介を通じて、日本の世論に陰謀論がどの程度入り込んでいるのか、それがどのような人々によって受容されているのかを考えてみたい。

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https://news.yahoo.co.jp/articles/3443ccfb83f6a78ed32897e3a8b33fcce2035334