「もし休業再要請が出ても、従う気ありませんね」

 関東近郊、地場のパチンコ店幹部である西口真二さん(仮名・47歳)はようやく活気を取り戻した柏の駅ビルの地下、
通称「マル地下」のゲーセン街を見やりながら、私の質問を遮るように言い切った。質問は緊急事態の再宣言について。

「あくまで個人的意見ですけど、休業再要請には従いません。私だけの本音じゃないでしょう」


「だってそうでしょう、私たちはゴールデンウィークの段階で99%が要請に従いました。99%ですよ、日本中で1万店のホールの99%、
こんな業界ありますかね、それくらい私たちは休業要請を守ったんです」
 西口さんの言う数字はおおよそのものだろう。私の手元にある実際の数字では2020年4月の段階でホール数は1万店を割っている。
また休業要請に従ったのは全国で98.7%となっているが、会話上ありがちな誤差の範囲であり言葉の本質は変わらない。
パチンコ業界が一丸となって国や自治体の要請に従ったことは事実である。日本の自動車産業主要10社国内単体の雇用数をも上回る、
22万人のパチンコ産業に従事する労働者とともに。
「みんな、その間のことはもう知らんぷりですかね。パチンコ業界がコロナを撒き散らす、パチンカスは不謹慎だと叩いたこと。
確かにごくわずかに営業を強行したホールもありましたよ、でもあんなの例外中の例外、
私も含めて国や自治体の要請に従ったんです。身銭切って休んでたのにね

「普段のおこないが悪いから、イメージが悪いからとか散々でしたね。いまその役目は夜の街ですかね。
ホストクラブもあれだけクラスターが出れば対策は必要でしょうね。でもパチンコ店からクラスターは発生していない」

 そう、クラスターは発生しなかった。いまに至るまで、日本中から袋叩きに遭って当然といった行為をパチンコ産業はしていない。
そもそも劇場であれ、居酒屋であれ、夜の街であれ、コロナが発生したからと十把一絡に叩いていいわけでもあるまい。

「あそこがそうだからどうとか言いたくありませんけど、百貨店とか発生しても叩かれない。世間のお気持ち次第ですね」

 苦笑する西口さんだが、かなり腹に据えかねていることが私にはわかる。西口さん、いや西口はあのころもそうだったが
すぐに言葉を荒らげる。普段は物静かで冷静なだけに瞭然だ。ブレスレット状にコマを余らせた雲上時計をじゃらりと回す。
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