【裁判長の説諭】将来有望な中学生が、母親の前で飲酒運転の車にはねられる衝撃的な事故、裁判官が下した異例の判決
https://news.yahoo.co.jp/articles/402ddc90118c4824dc16f8dd14da4c15167fec3d

周囲のみんなに貢献する気持ちが強かった中学生
「行ってきます!」
「忘れ物、ない? 気をつけてね」

母は玄関で、ブレザー姿の息子の襟を整える。
今朝もまた、いつもと同じ朝だと思っていた。
いや、それすら意識しないほど、ごくありふれた日常を送っていた。

母にとって、40歳を目前にしてようやく授かった子宝だった。
生活には決して余裕はなかった。パート勤務で得られる収入によって、細腕ひとつで育て上げる覚悟を決めていた。
息子の成長こそが、母の喜びであり、生き甲斐そのものであった。

息子は中学2年生。成績は優秀で、学年順位は常に1桁をキープしており、教師らからも将来を嘱望されていた。
将来の大学進学を視野に入れつつも、母に経済的な負担を掛けまいとして、公立の進学校に進むため、中学に上がったばかりの頃から高校受験を意識していた。

放課後、すぐに遊びに帰るクラスメイトたちを尻目に、彼は教室や図書室で居残って勉強をしていたのである。
学習塾に通いたいという本音もあったが、我が家にそのような余裕がないことは、彼も理解していた。
そこで、校門が閉まるまでの間、放課後も学校で自習をし、わからないことがあれば、いつでも職員室の教師に質問をしに行けるようにしていたのである。

ほぼひとりで教室や図書室を使わせてもらうことに、負い目を感じていたのか、彼は勉強が済んだときに、床の掃き掃除や窓ガラスの拭き掃除、あるいは花瓶の水の交換などを自主的に行っていた。

その様子は、校舎内で活動することが多い文化系の部活動をしているクラスメイトも度々目撃していた。ひとりで密かにみんなのために動いている彼を見かねて、部活終わりにその掃除を手伝う友人も現れた。
その友人たちに、彼はひとりひとり、礼を言い、頭を下げていた。