俺は今年の春までカッパの斡旋会社で働いてた
もちろんかっぱ寿司さんは大口の取引先だった
捕まえたカッパ達は口を揃えて
「かっぱ寿司は嫌です、せめて黄桜酒造にして下さい」
って懇願してたよ
まぁこっちも商売だったんでね
生活かかってたから聞いてやる余地は無かったけど

ある日の事、都内のかっぱ寿司さんから
「幼くて活きの良い奴を」ってオーダーが来てな
前日に捕まえたばかりの母子の娘の方を連れて行こうとしたら
母ガッパが「私が代わりに働きますから!どうか娘だけは!」
って俺の足に泣いてすがってきやがる
さすがに胸が痛んだけど、サラリーマンの自分にはどうする事も出来なくて
心を鬼にして、母ガッパを蹴飛ばして娘を連れて行ったさ
母親の悲痛な泣き声が牢に響いてた
娘の方は気丈にも涙をこらえてた
会社を辞めた今も、あの時の母ガッパの泣き声が俺の耳から離れないよ

娘の消息はハッキリとは聞かなかったが、まだ生きてるかもな
俺が辞めるまでは同じ店からは追加発注は来てなかったから
忍耐強そうな個体だったので、激務と酷使に必死で耐えてるんじゃないかな

母親の方は娘と引き離されたショックで精神を病んでしまって、
食事はおろか水分すら摂らなくなってな
「死にたい」「死なせて下さい」しか言わなくなって
使い物にならないからって理由で処分された