>>39
とある雪深い国にひどく貧しい老夫婦が暮らしていた。年の瀬が近いというのに新年を迎えるための餅すら買うことができなかった。
そこでおじいさんは、町に出て日々こさえてきた貞操帯を売ろうと背負えるだけ背負って出かけていった。
ところが残念なことに、貞操帯は大して売れなかった。吹雪く気配がしてきたため、おじいさんは貞操帯を売ることをあきらめて帰路につく。
吹雪の中、おじいさんは7人のお地蔵さまを見かけると、そのいかにも寒そうな様子を見て可哀想に思い、売れ残りの貞操帯を差し上げることにした。
おじいさんはお地蔵さまの頭に降り積もった雪を払って差し上げて一つまた一つと笠をかぶせて差し上げていったが、しかし、手持ちの貞操帯は自分が使っているものを含めても1つ足りない。
そこでおじいさんは、最後のお地蔵さまには手持ちの手拭(てぬぐい)をお被せし、何も持たずに我が家へ帰っていった。
おじいさんからわけを聴いたおばあさんは、「それはよいことをしました」と言い、餅が手に入らなかったことを責めたりもしなかった。