社説[性被害者「蔑視」発言]「心の傷」さらに深めた

政府が性犯罪や性暴力への対策を強化する方針を決め被害者ケアにも力を入れようとしている中、事実であれば耳を疑うような発言だ。

自民党の杉田水脈(みお)衆院議員が党内の会議で、性暴力被害者の相談事業を巡り「女性はいくらでもうそをつけますから」と述べたという。

杉田議員は否定しているが複数の出席者が認めている。

会議では来年度予算の概算要求に関し、行政や民間が運営する性暴力被害者のための「ワンストップ支援センター」を全国で増設する方針などを内閣府が説明した。

問題の発言は質疑の中で出た。杉田議員は、相談事業を民間委託ではなく警察が積極的に関与するよう主張し、被害の虚偽申告があるように受け取れる発言をしたという。

「魂の殺人」とも言われる性暴力。被害の声を出しづらく、必死の思いで訴えても信じてもらえず孤立する当事者たちがいる。

「うそをつく」という言葉は女性差別にとどまらず、苦しむ当事者をさらに傷つけるものだ。

通底するのは、被害者に落ち度があったという偏見や、本気で抵抗すれば避けられたはずだという思い込み、いわゆる「レイプ神話」ではないか。

内閣府の2017年の調査によると、男女約20人に1人が無理やり性交された経験を持ち、そのうち56・1%が誰にも相談していなかった。警察に連絡や相談した人はわずか3・7%だった。

社会の無理解が被害者に沈黙を強いてきたのだ。

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/639083