喉に詰まる、むせ込む、といえば食事中の“固形物”というイメージが強いが、最も危ないのは食べ物ではなく飲み物、なかでも「水」だという。
とくに冷たい水をペットボトルからラッパ飲みするのは危険で、上を向いて水を一気に飲もうとすると嚥下処理能力を超え、気管に入りやすくなるのだという。
危険な場面を避ける努力だけでなく、日常生活のなかで「誤嚥を防ぐ習慣」を身につけておくことも大切だ。誤嚥に詳しい西山耳鼻咽喉科医院理事長の西山耕一郎医師は「カラオケ」を勧める。
「誤嚥予防に最も効果的なのは、喉を鍛えること。歌を歌う際に使う筋肉は、嚥下と同じ咽頭挙上筋群なので、カラオケがピッタリなのです。
その際、選曲も重要で、音域に高低差がある楽曲がいい。喉に手をあてながら声を出すとわかりますが、喉仏は高い声を出すと上がり、低い声を出すと下がる。
この喉仏の上下運動をしっかり行なうためにも、高音と低音をどちらも適度に含む曲が効果的です。加山雄三さんの代表曲『君といつまでも』もいいと思います」
ただし、どんなに気をつけても、誤嚥リスクをゼロにするのは至難。とくに男性は女性に比べて、加齢による嚥下機能が衰えやすいことも分かっている。
いざ水を誤嚥してしまった時、重症化しないよう、日頃から「口内環境」を整えることも重要だ。
誤嚥の際に口内の雑菌が肺に入ることで、誤嚥性肺炎などを招く恐れもある。桜美林大老年学総合研究所所長で誤嚥に詳しい鈴木隆雄教授が語る。
「老化とともに誰しも口内環境は悪化し、唾液にも細菌が混じりやすくなる。睡眠中など、無意識のうちに唾液が肺に入ってしまう『不顕性誤嚥』も怖い。
そこで重要になってくるのが、日頃の『歯磨き』です。一日3回、毎食後の歯磨きはもちろん、入れ歯も清潔な手入れが必要です。基本のキである歯磨きが、誤嚥時の明暗を分ける重要なファクターなのです」
口内細菌のなかでも歯周病菌はとくに危険性が高く、誤嚥時の重症化リスクを上げる。
「かかりつけの歯科医で歯周病菌を除去しておくのもいいでしょう」(同前)
水に“飲まれない”よう、正しい知識を持って残暑を乗り切りたい。
https://news.yahoo.co.jp/articles/1e226a41cccda256a476cfdb5786bca12accaa9d