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 名探偵明智小五郎の生みの親として知られる、日本ミステリー小説の祖・江
戸川乱歩。没後55年を経た今日でも、怪しくも懐かしい乱歩ワールドは読者を
魅了してやまない。
 奈落一騎著、荒俣宏監修『江戸川乱歩語辞典』(誠文堂新光社)は、乱歩に
まつわる言葉を蒐集し、解説を加えたユニークな辞典だ。乱歩作品の登場人物
や舞台、名台詞、小道具をはじめ、乱歩その人と関わりのあるキーワードや人
名も掲載。〈一寸法師〉〈H・P・ラヴクラフト〉〈隠れ蓑願望〉〈三角館〉
〈探偵七つ道具〉〈ニセ明智小五郎〉……などの項目が五十音順に並んでいる。
中には『盲獣』で真犯人が口ずさむ歌〈芋虫ゴーロゴロ、芋虫ゴーロゴロ〉や、
『青銅の魔人』で怪物が立てる音〈ギリギリ、ギリギリ〉といった項目まであ
り、マニアックな着眼点ににやりとしてしまう。
 膨大な映像化作品やコミック、乱歩に影響を受けたロックバンド(人間椅子
や筋肉少女帯)までもカバー。多くのクリエイターが携わってきた“乱歩カル
チャー”の全体像を、これ一冊で把握することが可能だ。著名人による乱歩作
品ベスト3、作品の舞台を紹介するマップなど企画ページも充実。これほど通
読欲をそそられる辞典も珍しい。
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