「119番して救急車を呼ぶ人たちのほとんどが、近くまできたらサイレンを鳴らさないで来てください、と言われるんです。
でも家の前につくまでサイレンを消すわけにはいかないんですよ」熊本市消防局を取材していると、情報司令課の職員からこのような言葉が飛び出した。
確かに、サイレンを鳴らしたまま救急車が家の前に止まると目立ってしまうし、近所でサイレンが聞こえると、「おや、近くだ。誰の家だろう」と思ってしまうだろう。
呼ぶ方としては、サイレンは消してもらう方がありがたいのだが…。

 市消防局によると、緊急走行時のサイレン吹鳴は道路交通法で義務付けられているという。消防法ではないのだ。
道路交通法では救急車や消防車などの緊急車両が、事故や火事などの現場に向かう際は「サイレンを鳴らし、赤色の警光灯をつけなければならない」と規定している。

 サイレンの音量についても「車両の前方20メートルの位置で90デシベル以上120デシベル以下」との基準がある。
緊急車両は、速度規制や信号に従わずに通行することもある。その際の危険を回避するために、音と光で周囲に確実に車両の存在を
知らせなければならないということだろう。

 市消防局によると、管内人口は益城町、西原村を含め約78万人。高齢化の進展に伴い119番の件数は年々増え、2018年は5万2176件。
このうち救急要請は3万8706件と全体の7割を超えているという。

 1日当たり100件以上の要請がある計算だが、通報者の大半が「サイレンを鳴らさないで来て」と要望するという。
中には「オレが頼んどっとに、何ででけんとや(俺が頼んでいるのに、どうしてできないんだ)」と“逆ギレ”されることもあるらしい。
到着した後で、文句を言われる隊員もいるという。

 電話口では明らかに苦しそうなのに「サイレンを消すわけにはいかないんです」と説明すると、「じゃあ、もういいです」と要請を取りやめる人もいるというから驚きだ。

 しかし市消防局としても道交法の定めがあるため、たとえ交通量が少なかったり、深夜であったりしても、要請のあった場所までサイレンを鳴らして走行する、とのスタンスは崩せない。

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https://news.yahoo.co.jp/articles/9218bf583e6cf0caf06400a0ddfdce2ab25debeb