国産化も進んでいない…

 国産化の動きはどのような状況であろうか。韓国では半導体製造用の高純度のフッ化水素の国産化を進めており、
この6月から量産を始めたとの新聞報道もある。実際にフッ化水素の輸入額は減少している。フッ化水素の品質は
様々であり、日本が得意とする超高純度フッ化水素といった品質のものまで製造できるのか明らかではないが、今後は
順次国産化が進んでいくものと考えられる。

 レジストについては2019年の輸入額は前年比で5.2%減であったものの、2020年1〜5月は前年同期比が33.8%増と増加に転じた。

 またフッ化ポリイミドについても、2019年の前年比は44.9%増、2020年1〜5月の前年同期比は7.1%増であり増加が
続いている。つまり輸出は増加しており、国産品が輸入品に代替しているといった動きは見られない。実際、レジストや
フッ化ポリイミドについては、韓国国内で量産化が始まるといった情報はなく、国産化は進んでいないといえる。

 輸出管理適正化に関する措置を講じてから1年近くが経つが、個別許可に切り替えられた3品目については、フッ化
水素は輸入の日本依存からの脱却が一定程度進み、国産化も徐々に進んでいるといえるが、レジストやフッ化ポリイミドに
ついては輸入の日本依存からの脱却も国産化も進んでいない。

 レジストは半導体製造に必須であり、フッ化ポリイミドも有機ELの生産に必要である。半導体も有機ELも必要な部品・
素材のひとつでも欠ければ製造ができないわけであり、この観点からは、輸入の日本依存からの脱却や国産化といった
韓国の戦略が十分に功を奏していないことがわかる。半導体関連部品・素材などの日本依存脱却はそう簡単ではなさそうだ。

高安 雄一(大東文化大学教授)