世界各地で感染を広げている新型コロナウイルスですが、国によって
感染者の増加率や死亡率に大きな差があることがわかってきました。

これらの差は国による検疫の違いの他に、ウイルスそのものが変異して
引き起こされた可能性が以前の研究で示唆されています。

しかし今回、東京大学などの研究者たちによって日本人の免疫反応が詳しく
調べられた結果、日本人には新型コロナウイルスに対する免疫が一部存在
していることが示唆されました。

これらの免疫力は、2003年のSARS発生後もコロナウイルス(弱毒化したもの)
が断続的に東アジアで発生しており、東アジア人の間に風土病として流行
することで獲得されていたとのこと。

もし今回の研究結果が事実ならば、風土病となったコロナウイルスが、
日本人に新型コロナウイルスと戦うための免疫学習の機会をあらかじめ
与えててくれたことになり、日本における低い死亡者の説明になります。

では風邪コロナウイルスは、どのようにして日本人に免疫を与えていたの
でしょうか?

(中略)

また、東大の研究以外にも、風邪コロナウイルスによって新型コロナウイルス
に対する免疫付与が行われたとする研究が存在します。

中国の武漢大学によって行われた研究では、新型コロナウイルスに感染した
経歴のない人間の34%に、新型コロナウイルスを認識する抗体の生産能力が
あることがわかりました。

この抗体は、新型コロナウイルスが発生するより前の2015年から2018年に
得られた血液サンプルにも存在しており、この抗体が新型コロナウイルス
以外のウイルス(おそらく風邪コロナウイルス)によってもたらされた
可能性を示唆しています。

このころから中国の研究者は、既存の風邪コロナウイルスによって新型
コロナウイルスに対する免疫力が人間に付加されたと主張していました。

日本と中国の結論は多くの点で一致しており「断続的に発生する弱毒化した
SARS(日本の説)」または「古くからの風邪コロナウイルス(中国の説)」
といった他のコロナウイルスからの感染が、新型コロナウイルスに対する、
一種のワクチンとなったとしています。

この事実は、風土病に対する一般的な認識と同様です。

すなわち、感染症の発生地域の人間・動物・植物には、何らかの耐性が
あるのに対して、遠く離れた地域の生物には免疫がないとするものです。

かつてのペストのように、元々はアジアの病気であったものがヨーロッパや
アメリカに広ると、被害がより大きくなる傾向があります。

国の検疫対応、変異したウイルスの型、そして今回明らかになった他の
コロナウイルスによる事前の免疫学習。

新型コロナウイルスの流行の原因は様々であり、現状ではどれが決定的な
原因かはわかりません。しかしウイルスの情報が増えれば増えるほど、解決
への道も開けていくでしょう。

https://nazology.net/archives/60168