新型コロナウイルスを抑制する治療薬として有力視されているレムデシビルよりはるかに優れた効果のある薬物を、韓国パスツール研究所の研究チームが発見した。
同研究所は10カ所の病院と共に研究者臨床試験に着手した。
韓国パスツール研究所のキム・スンテク人獣共通ウイルス研究チーム長は14日、「新型コロナウイルスの抑制効果のある24の薬物でヒト肺細胞培養実験を行った結果、血液の抗凝固剤および膵炎治療薬の成分である『ナファモスタットメシル酸塩』(以下ナファモスタット)が最も強力な抗ウイルス効能を示した」と発表した。

同研究チームは12日(現地時間)、研究結果を論文事前掲載サイト「バイオアーカイブ」(bioRxiv)に報告し、特許を出願する一方、関連分野の国際ジャーナルに論文掲載の承認を申請した。

同研究チームは、新型コロナウイルスが細胞に進入する際に使うスパイクタンパク質を活性化する過程で、「TMPRSS2」というタンパク質分解酵素が作用するという最新のドイツの研究結果を参考にし、同タンパク質を抑制する薬物を対象に抗ウイルス効能を研究してきた。
ウイルスは表面にあるスパイクタンパク質を利用して人間の細胞の中に入った後、無限複製を繰り返し、細胞に感染を広げる。細胞内でウイルスのgRNA(ガイドRNA)は、自らを断片化するタンパク質分解酵素を作り、16個に分割される。
この中には、複製機能を担うRNAポリメラーゼも含まれている。 
タンパク質分解酵素を抑制するか、RNAポリメラーゼを抑制すればウイルスの無限増殖を防ぐことができる。
現在臨床試験中のレムデシビルやアビガンはRNAポリメラーゼを抑制する効能があり、カレトラ(ロピナビルとリトナビル配合剤)はタンパク質分解酵素を抑制する効能がある。

韓国パスツール研究チームは今年2月から新型コロナウイルス治療薬の候補物質を発掘する「薬物再創出」研究を通じて24の薬物を発掘し、「ベロ(Vero)細胞」培養実験を行ってきた。
ベロ細胞とはアフリカミドリザルの腎臓上皮細胞に由来するもので、培養実験に多く使われる。
キム・スンテクチーム長は「新型コロナウイルスは人間の肺に侵入して病気を引き起こす。
新型コロナウイルスがベロ細胞に感染する過程と肺細胞に感染する過程が異なる点に着目し、人間の肺細胞培養実験も行った」と説明した。
肺細胞としては肺がん細胞に由来する「Calu-3細胞」を使用した。

実験の結果、ベロ細胞では新型コロナウイルス抑制効果が大きくなかったナファモスタットが、Calu-3肺細胞では最も強力な効能を示した。
どの程度の濃度の薬物を投与したときにウイルス複製を50%まで減らせるかを薬効として示す「IC50」が、ナファモスタットの場合、ベロ細胞では13.88マイクロモーラー(uM)だったが、肺細胞では0.0022マイクロモーラーだった。
これはレムデシビルの肺細胞IC501.3マイクロモーラーより600倍も小さいもので、その分ナファモスタットの効能が優れていることを意味する。

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