<欧州30カ国を対象に、ソーシャル・ディスタンシングに基づく施策が
新型コロナウイルス感染症の感染者数や死亡者数の減少にもたらす効果
について分析した......>

新型コロナウイルス感染症の感染拡大を抑制するための公衆衛生戦略として
「ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離戦略)」が世界各国で採用され、
欧米諸国の多くは、2020年3月以降、国民や市民、企業の活動を強制的に制限
する「ロックダウン(都市封鎖)」の措置を講じてきた。

それでは実際、ロックダウンなど、ソーシャル・ディスタンシングに基づく
施策は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の抑制にどのくらい寄与して
いるのだろうか。

外出禁止は感染抑制に顕著な効果が認められなかった
英イースト・アングリア大学(UEA)の研究チームは、英国、ドイツ、フランス
など、欧州30カ国を対象に、ソーシャル・ディスタンシングに基づく施策が
新型コロナウイルス感染症の感染者数や死亡者数の減少にもたらす効果に
ついて分析し、2020年5月6日、未査読の研究論文を「メドアーカイブ」で
公開した。

これによると、休校や大規模集会の禁止、一部のサービス業の営業停止は、
感染拡大の抑制に効果があった一方、外出禁止や、生活必需品を扱う店舗以外
の営業停止は、感染者数や死亡者数の抑制に顕著な効果が認められなかった。
また、現時点において、公共の場所でのマスク着用の義務化にも特段の効果は
確認されていない。

研究チームは、欧州連合(EU)の専門機関「欧州疫病予防管理センター(ECDC)」が毎日発表している各国の新型コロナウイルス感染症の感染者数
および死亡者数と、休校、大規模集会の禁止、店舗の営業停止、外出禁止、
マスクの着用といった各施策の各国での実施開始日をもとに、統計モデル
「一般化加法混合モデル(GAMM)」で分析した。

感染拡大の抑制と最も高い相関が認められたのは休校だった
感染拡大の抑制と最も高い相関が認められたのは休校だ。ただし、小学校、
中学校、高校、大学のうち、いずれの教育機関での休校が感染抑制に最も寄与
したのかは明らかになっていない。

大規模集会の禁止は、休校に次いで、感染拡大の抑制に高い効果が認められた。
研究論文の筆頭著者であるイースト・アングリア大学のポール・ハンター教授
は「これまでにも、音楽フェスティバルと関連した呼吸器感染症の発生が確認
されている」と指摘。2009年には、欧州の6カ所の大規模音楽フェスティバル
のうち3カ所で新型インフルエンザが発生している。

人々が集まるレストランやバー、レジャー施設、イベント会場の閉鎖も感染
拡大の抑制に寄与した。その一方で、ハンター教授は「これら以外の業種に
おける営業停止は、感染拡大の抑制にほとんど影響がなかったとみられる」
と考察している。

また、外出禁止は、新型コロナウイルス感染症の発生率の減少との相関がなく、
むしろ、外出禁止の日数が増えるほど、感染者数は増加した。

続きは下記
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/05/post-93360.php