(社説)対コロナ 「戦争」の例えは適切か


 国民の生命を脅かし、経済にも大きな打撃をもたらす。その危機の深刻さを訴える狙いがあるにしても、
新型コロナウイルスへの対応を「戦争」と例えることに、政治家はもっと慎重であるべきだろう。

 確かに、医療現場では、まさに「戦場」のような過酷な光景が繰り広げられている。

 それでも、いま起きていることは、あくまで公衆衛生上の緊急事態であり、それに伴う経済、社会の危機である。
武力による国家間の争いなどではもちろんない。

「戦時」となると、国民の団結が有無をいわさず求められ、隊列を乱す者は糾弾される。
理を尽くして説得することもなく、批判や排除の動きが広がれば、社会に亀裂が走り、幅広い連帯は失われてしまう。

ウイルスをむやみに「敵視」することが、感染者やその周辺への差別を助長する恐れもぬぐえない。

ひとびとの生命と暮らしを守る確かな行動を促すため、冷静に考え抜かれた言葉こそ、政治家に求められる。

https://www.asahi.com/articles/DA3S14466743.html