16年にヘイトスピーチ解消法が制定されたが、罰則はなくヘイトスピーチは良くないということを示す抽象的なものにとどまった。
解消法施行直後は差別発言に対する警察の取り締まりを恐れる気持ちがヘイトスピーチの参加者にもあり、安易な気持ちで参加する人は減った。
かつては500人集まることもあったが現在は多くても200人規模であり、回数も減ったという。
「ですが、時間が経つと一部のコアな排外主義者は特に警察が動くわけではないと気付いて開き直り、彼らの差別表現のひどさは法律ができる前に戻っています」。
一方で、川崎市ではヘイトスピーチを3回繰り返した場合には罰則がつくという条例が2020年夏に施行される。
「全国的にそういった取り組みが広がっていくといいと思います。最終的には国が罰則を設けるのが理想的です」



 インターネットやSNSの普及はヘイトスピーチにどのような影響を与えたのだろうか。「ネットが普及する中で、匿名でテレビで言ってはいけないようなことを露骨に言う文化ができたのだと思います」。
最初は一部の人のみが見るような2ちゃんねるなどの匿名掲示板に差別発言が書き込まれていたが、Twitterの出現により差別意識が一気に広がったという。
「一部の人が見えないところでこそこそ言うのではなく、ネットに差別的な言葉が溢れるという状況になった点で決定的でした」


 また、ネット上ではデモや集会と比較してはるか楽に差別発言ができる。「実際にデモや集会などで表に出てヘイトスピーチをする人は、あくまでもごく一部です。実際、道端で彼らと会った人々が彼らに共感して支持することはあまりないと思います」。
一方で、ニコニコ動画やYouTubeに流れたデモや集会の中継や録画を見て面白がりながらコメントを付ける人は多いという。
「街中のデモや集会がネットで拡散され多くの人々が匿名でそれらに『参加』することがヘイトスピーチ問題の裾野を広げています」。
ヘイトスピーチ解消法はデモや集会を念頭に置いたものだが「ネット上の度を越した攻撃的な表現を抑え込む働きかけもするべきです」。
現在はTwitterやGoogleなどの企業がヘイトスピーチの抑え込みを行っているが、企業によって対応は違うため、国で統一したネット上の表現に関する法律が必要だという。


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http://www.todaishimbun.org/osawa20200501/