WHO批判強めるトランプ氏 米政権の失策を責任転嫁―新型コロナ

 【ワシントン時事】世界保健機関(WHO)の新型コロナウイルスへの対応をめぐってトランプ米政権が批判を強めている。ウイルスの発生源となった中国への批判が、WHOに飛び火した形だ。「コロナ危機」下での国際協調を乱しかねないと懸念する声も上がる。

 「(新型ウイルスの)脅威を過小評価した」。トランプ大統領はWHOへの「口撃」を繰り返している。米政権が1月末に発表した中国からの入国禁止措置をWHOが非難したことなどを挙げ、「中国寄り」と主張。
「全く公平ではない」として拠出金停止を警告した。国務省当局者も9日、「WHOは1月30日まで国際的な緊急事態を宣言しなかった」と指摘し、「時間と人命を犠牲にした」と批判した。

 背景には、米国で感染者や死者が増加する中、トランプ氏自身が当初、新型ウイルスの脅威を軽視したと批判されていることがある。このため政権の失策を、WHOの「対応の遅れ」に責任転嫁しようとしているとの見方も出ている。

 これまで新型ウイルス発生で中国の初動対応の遅れを強調する米国に対し、中国は「米軍関与説」を持ち出し、非難合戦を展開してきた。

だが3月下旬にトランプ氏と中国の習近平国家主席が電話会談し、双方が矛を収めることで合意したとされる。中国からの医療品輸入の必要性や米中貿易合意への影響を配慮したとみられている。これを受けWHOが「新たな非難の標的」(ニューヨーク・タイムズ紙)になった格好だ。

 だが、「コロナ危機」のさなかにWHOをやり玉に挙げることは、新型ウイルス対策をめぐる国際協力に悪影響を及ぼしかねない。米戦略国際問題研究所(CSIS)のスティーブン・モリソン国際保健政策センター長はワシントン・ポスト紙に「(WHO批判は)危険で完全に不適切だ」と懸念を示した。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020041000684&;g=int