1万5000年前から眠る新種の古代ウイルスが氷河の中から発見される

中国北西部のチベット高原におよそ1万5000年前から存在する氷河で採掘された氷のサンプルから、
30種類以上のウイルスが発見されたと報告されています。研究チームによると、サンプルから見つかった
33種類のうち、28種類はこれまで発見されたことのない未知のウイルスだったとのことです。

アメリカと中国の科学者による研究チームは中国北西部のチベット高原を1992年と2015年に訪れ、
Guliya氷帽と呼ばれる氷塊を50メートル掘り下げてサンプルを採取しました。

採取された2つのサンプルはどちらも外層が汚染されていたため、研究チームはサンプルを外層から
5mmほどを切除してからエタノールと水で洗浄し、完全に汚染されていない氷層を露出させてから、
中にいる微生物を調査しました。

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その結果、2つのサンプルから33種類のウイルスが発見され、そのうち28種類はこれまで知られていない
新種のウイルスだったことがわかりました。また、1992年に採取されたサンプルと2005年に採取された
サンプルでは、中に眠っていた微生物の種類が大きく異なっていたことも判明。研究チームは、2つの
サンプルに含まれていた微生物に違いが生じたのは「サンプルとなった氷が堆積した時代の気候差」が
理由だと論じています。

フランス国立科学研究センターの環境ウイルス学研究者であるChantal Abergel氏は、何十種類もの
ウイルスがこれまで全く発見されていなかったことは「驚くべきことではありません」とコメントし、
「人類が地球上のウイルスの多様性を完全に網羅するにはほど遠い状況です」と述べました。

しかし、研究チームは「人為的な気候変動の影響で、氷河の中に眠っている古代のウイルスを発見することが
難しくなるかもしれない」と推測し、温暖化の影響で、数千年あるいは数万年にわたって閉じ込められてきた
微生物やウイルスが世界中の氷河から溶け出してしまうことを危惧しています。

研究チームは「氷河中の微生物やウイルスは、過去の地球の気候を調べる情報源となり得ます。
しかし、気候変動により、氷河というアーカイブを喪失するばかりか、最悪氷河の融解によって未知の
病原体が環境中に放出される可能性があります」と述べています。

ボーリング・グリーン州立大学の古代微生物学者であるスコット・ロジャーズ氏は「世界中で氷の融解が
増加するにつれて、病原性微生物が世に出回るリスクも増加します」と警鐘を鳴らしました。

https://gigazine.net/news/20200123-ancient-viruses-iceberg/