野口悠紀雄氏「20年後には日本人が中国に出稼ぎする」

 中国を中心に今後の世界経済について、野口悠紀雄・一橋大名誉教授にインタビューした。野口氏は「日本は既得権益を持っている人たちが新しい技術の導入に反対して足を引っ張っている」と述べ、規制緩和で新たな産業を創出すべきだと主張した。【聞き手は経済プレミア編集長・川口雅浩】

 ――ここ数年の中国の技術的進歩には目を見張るものがあります。

 ◆野口悠紀雄さん 中国はガソリンエンジン車や固定電話を飛び越えて、電気自動車(EV)やスマートフォンを普及させたように、古い技術を飛び越えてしまっている。
「カエル跳び」(リープフロッグ)と呼ばれる現象が起きている。最初は海外の技術の模倣だったが、今は違う。世界のフィンテック投資の半分は中国で行われている。EVも中国が世界で最も普及している。自動車もAI(人工知能)やEVの時代になれば、中国か米国の覇権争いになる。

 ――中国の成長はいつまで続くのでしょうか。

 ◆中国の成長は少子化で鈍化するが、経済協力開発機構(OECD)の予測によると、2060年に1人当たり国内総生産(GDP)が日本の6割から7割くらいになる。まだ日本に追いつかないが、都市の住民は日本の平均を追い抜く可能性がある。
日本より中国の賃金が高いということも大いにありうる。通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)などの高度な専門家については、既に日本よりも賃金が高くなっている。

 ◇なぜ「カエル跳び」起きないか

 ――優秀な技術者が世界から中国に集まるということですか。

 ◆日本の高度な専門家も中国に引き抜かれてしまう。40年ごろには、中国から労働者が日本に出稼ぎに来るのではなく、日本人が中国に出稼ぎに行くという時代が来るかもしれない。そうなったら大変だ。日本では介護が必要な人がたくさんいるのに、誰が面倒を見てくれるのか。

 ――日本で中国の「カエル跳び」のような技術革新が起きないのはどうしてでしょうか。

 ◆日本は既得権益を持っている人たちが新しい技術の導入に反対しているからだ。例えばライドシェアリングの技術はあっても、日本はタクシー業界が反対しているので導入できない。既得権益が足を引っ張っている。

 ◇日本社会を変えるには

 ――日本社会を変える必要があるということですか。

 ◆日本が停滞しているのは、既得権益が足を引っ張っているからだ。00年ごろから世界的に水平分業が進んだが、日本の製造業は国内の工場を閉鎖できず、新しい変化に対応できなかった。米アップルのようになれなかった。

続く
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