日本を代表する大手メーカーを数年前に辞めた元社員の女性(34)はこう証言した。会社に「妖精さん」がいた――。
フレックスタイムを使って午前7時前に出社、タイムカードを押してから食堂へ。コンビニで買ったご飯を食べ、
スポーツ新聞を読んでゆったり過ごし、他の社員が出社する9時前に静かに自席に戻っていく。

1970年代以降に採用され、工場勤務、海外への工場移転や新しい機械の導入で、50歳を過ぎて事務部門に
配置転換されたという。社内では、パソコンは「ひとさし指の一本指打法」で、仕事もないのに「エア残業」しているとの
批判もあった。かつてがむしゃらに働き、日本の製造業が強い時代を支えた人たちだ。

「仕事へのやる気もなく、ただ定年を待つだけに見える。会社は解雇もできず、他に移すポジションもない。
若手はストレスがたまる」。この女性は、同社に10年近く勤めた後、IT企業に転職した。「妖精さんたちの
定年延長も決まり、これ以上、一緒に過ごせない。もっと若くスピード感のある会社に」と考えた。週末の夕暮れ時、
この会社近くの焼き鳥屋で、話を聞いた女性と同じメーカー勤務の男性(58)と記者が知り合った。ほぼ毎日
6時ごろからビールを飲んで帰る。単身赴任中の男性は「娘が大学生だからもうちょっと働かないとね」。 (真海喬生)

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