北大・岩谷教授、拘束解かれ帰国 中国は「保釈」と説明

 政府は15日、中国当局に9月から拘束されていた岩谷將(いわたにのぶ)・北海道大学法学研究科教授(42)が解放され、同日帰国したと発表した。健康状態に問題はないという。

 日中関係筋によると、岩谷氏は9月3日に中国に入国し、北京滞在中に拘束された。政府系シンクタンク・中国社会科学院近代史研究所の招きで北京を訪れていた。岩谷氏は中国近現代史が専門。過去に防衛省防衛研究所や外務省に勤務した経験がある。

 日本側は繰り返し中国側に解放を要求。安倍晋三首相が10月23日に、天皇陛下の「即位礼正殿の儀」に参列した中国の王岐山(ワンチーシャン)国家副主席と会談した際にも、直接解放を求めていた。
また、今月4日には訪問中のタイで李克強(リーコーチアン)首相にも前向きな対応を求めていた。安倍首相は15日、「政府としてはあらゆるレベルで早期帰国に向けて働きかけを行ってきた。
私自身、一日も早くご家族の元に帰れるように強く要請をしてきた。無事に帰国され、ご家族と再会できたことは本当に良かった」と記者団に語った。

 中国外務省の耿爽副報道局長は15日の定例会見で、岩谷氏が国家機密にかかわる資料を集めていたとした上で、保釈したことを明らかにした。

 耿氏は「9月8日、国家安全当局が(岩谷氏の)滞在先のホテルを捜査し、(岩谷氏が)収集した中国の国家秘密に関わる資料を押収した」と説明。その後の取り調べで、岩谷氏が「過去も含めて大量の機密資料を収集していたことを認めた」として、当局は反スパイ法と刑法の違反に当たると認定したと述べた。
ただ、岩谷氏が容疑を認め、反省の意思を表明する手続きに応じたため、保釈したと説明した。菅義偉官房長官は会見で、拘束理由について「事柄の性質上、詳細についてコメントは控えたい」と述べた。(楢崎貴司、北京=高田正幸)

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