【寄稿】中国との大いなる対立

 まさにその通りだ。中国共産党の機関紙「人民日報」は今年5月、対米「人民戦争」の宣戦布告を行った。習近平国家主席は、10年以上にわたり、中国が世界で唯一の正統な国家だという考えをほのめかしている。
中国軍の高官らは今、米海軍の艦船を沈没させ何千人単位で船員を死亡させることについて、公の場で喜々として語っている。

 世界には長い間、中国という一党支配国家が国際的なシステムの中で「責任ある利害関係者」になる時が来るだろうという期待があった。2005年にロバート・ゼーリック国務副長官(当時)はそう述べていた。
米国の政策は、その移行を促し、中国の支配層を支援するというものだった。米国の大統領は中国の指導者の救済に乗り出すことさえあった。リチャード・ニクソン大統領は1972年、何年にもわたる文化大革命で中国の国力が弱まっていた時に北京を訪問した。ジョージ・H・W・ブッシュ(父)大統領は1989年の天安門事件の直後にケ小平氏を支持した。
ビル・クリントン大統領は中国経済が低迷していた1999年、中国が世界貿易機関(WTO)に加盟できるようにする交渉をまとめた。

 こうした期待は、習氏が「中国の夢」や「中華民族の偉大な復興」を強引に追い求めるなかで打ち砕かれてきた。
同氏は極めて差別的な規則の施行や、12月1日に発効予定の厳格なサイバーセキュリティー規則のような法規制などを使い、外国企業を中国市場から容赦なく締め出している。

 それと同時に、習氏は国営セクターを確実に「前進」させてきた。国営の大企業を再統合して1社ないし2社による独占状態を再現し、以前に行われた部分的な民営化の動きを転換させ、
国に民間上場企業の株式を購入させ、好みの国営企業に補助金をつぎ込み、株式市場の変動をより厳しく制御し、「中国製造2025」といった貿易制限的な産業政策を通じた発展を追求している。

 習氏はまた、全体主義的な統制措置を導入しつつある。中国全土で来年開始予定の「社会信用システム」は、個人および企業の行為を常時監視し、国の基準に沿って採点する。
2020年までには推計6億2600万台のカメラが市民を監視することになる。最悪なのは、信仰と少数派のアイデンティティーを中国から排除しようとする恐ろしい取り組みだ。
それが最も顕著に表れているのが、多数の人々を収容所に拘束したり、教会やイスラム教礼拝堂を破壊したり、宗教信仰者などの臓器を収奪したりする行為だ。

 端的に言うと、習氏は毛沢東主義の新形態を実行に移そうとしている。一部の人々が「偉大なる回帰」と呼ぶ政策の結果、米国は中国の体制にあからさまな敵意を示すレーガン政権のような政策を取らざるを得なくなっている。

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