輸出規制、すれ違う日韓 WTO出席国は距離置く

(略)23〜24日にスイス・ジュネーブで開いた一般理事会には、韓国が議題として
提案した。金勝鎬新通商秩序戦略室長は同日の演説で「政治目的から世界貿易をかく乱
する行為で、多国間貿易の秩序に甚大な影響を与える」と非難した。その後、金氏は
記者団に「日本に2国間対話を申し入れたが、日本からの反応はなかった」と語った。
日本側によると、韓国からの直接の申し入れはなかった。韓国の金室長は一般理事会で
各国代表に対し「日本と韓国が2国間対話することに反対する方はいらっしゃいますか」
と呼びかけたが、会場で出席国の反応はなかった。
これについて金室長は記者会見で「(各国の)沈黙こそが、韓国側の提案が支持された
という証拠だ」という認識を示した。
伊原純一・駐ジュネーブ国際機関政府代表部大使は「(事務レベルの会合で)既に5時間
以上も韓国と対話をしている」と反論した。伊原氏は一般理事会で「日本だけでなく、
韓国も含めた多くの国が国際的な枠組みに基づき必要な輸出管理の見直しをしている」
と指摘し、日韓の主張はすれ違った。

韓国は日本の輸出規制が自由貿易に反するとして撤回を求めている。これに対して
日本側は、安全保障のための管理体制の見直しであって輸出規制にはあたらないと反論する。
WTOの一般理事会は加盟164カ国・地域に共通する貿易課題を議論するのが主な目的だ。
過熱する日韓の対立に、欧州連合(EU)のマルク大使は日本経済新聞社の取材に「2国間の
問題であり、我々は関与しない」と述べた。アフリカの国の代表も「日本の措置の是非は
さておき、なぜこの場で議題になるかは理解に苦しむ」と首をかしげた。
韓国はWTOに日本を提訴をする準備を進めている。今回、一般理事会で議題にしたのも、
提訴を視野に加盟国の支持を得ることが目的とみられる。ただ「韓国の主張に賛同する
空気ではなかった」(外交筋)といい、狙い通りに効果があったかどうかは不透明だ。
一般理事会では議長国のタイが「両国が友好的な解決策を模索することを望む」と議論を
締めくくった。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47754240V20C19A7000000/