京都府南丹市が24日に開催予定だった精神科医・香山リカさんの子育て応援講演会で、催しへの妨害を示唆する予告を受けて講演者を差し替えていたことが22日、分かった。香山さんは京都新聞の取材に「行政が脅しに屈してはならない。前例を作ってしまうことになりかねず、毅然(きぜん)とした態度を示してほしかった」と憤っている。

 子育て講演会は昨年度から同市と府などが主催する「京都丹波子育て応援フェスタ」の一環。香山さんは「子どもの心を豊かにはぐくむために―精神科医からのアドバイス」と題して、同市園部町の市国際交流会館で講演する予定だった。

 市によると、今月15日以降、子育て支援課に香山さんの講演への抗議が電話で5件、来庁で1件あった。「日の丸の服を着て行ってもいいのか」といった匿名の電話のほか、「香山さんをよく思わない人が行くかもしれない。大音量を発する車が来たり、イベント会場で暴力を振るわれ、けが人が出たら大変だろう」と中止を迫る内容もあり、京都府警南丹署に相談した。

 子育て応援フェスタでは香山さんの講演のほかに、子どもの来場が見込まれるものづくり体験や出産や子育ての相談コーナーなどを実施する予定のため、同課は「本来は警備体制をしいてでもやるべきだが、会場の混乱を避けるためにやむを得ず、講師の差し替えを決めた」としている。

 香山さんによると、講演は、育児に悩む母親と向き合ってきた経験をもとに、子育てに自信を持てるよう励ます内容で、「南丹市の母親に会えるのを楽しみにしていた。安全を考えるのは大切だが警備強化など対策も考えられたはず。市から事前に相談はなく、中止に至った具体的な説明もない」と不信感を募らせる。

 代役の講師は、ジャーナリストの石川結貴さんが務める予定。
https://s.kyoto-np.jp/politics/article/20181122000167